ミッション本位で雇う

 私の以前の勤務先に、期待通りの成果を上げていない部門長がいた。彼女は必ずしも、悪い人ではなかった。むしろ、スタッフや同僚、経営陣から好感を持たれていた。しかし、事業を次のレベルに押し上げるのに必要な、クリエイティビティのかけらも示していなかった。そうして、彼女を部門長職から外す決定がなされた。

 その後、不思議なことが起きた。会社を辞めた後、彼女がインテリアデコレーターとして成功を収めたのだ。クライアントたちは、彼女がクリエイティブかつスタイリッシュに空間をつくり上げていく才能にほれ込んだ。彼女はまた、かつて部門長として好かれていた資質の多くも発揮した。つまり、聞き上手で、一緒に仕事がしやすく、結果を重視したのだ。

 なぜ同一人物が、ある状況ではまったく冴えず平凡なのに、別の状況では極めて創造性豊かになりうるのか。最も簡単な答えは、彼女が前の会社のビジネスよりも、インテリアデコレーションにより興味を持っていたからだ。内発的動機付けが創造性の重要な構成要素(邦訳はこちら)であることを実証する研究には、こと欠かない。

 イノベーションに関する最大の誤解は、その本質がアイデアにあると考えることである。そうではない。その本質は、問題を解決することにある。したがって、イノベーティブなチームづくりの第1歩は、解決すべき問題に興味を持っている人を雇うことだ。共通のミッションへの真摯なコミットメントがあれば、アイデアはおのずと出てくる。 

 心理的安全性を確保する

 2012年、グーグルは巨大な研究プロジェクトに着手した。コードネームは「プロジェクト・アリストテレス」。その目的は、成功し続けるチームを構築するカギを見つけることだった。

 チームの協働の仕方について、同社は、考えられるあらゆる様相を綿密に洗い出した。リーダーシップはどんなスタイルか、仕事以外でどれだけ頻繁に会うか、チームメンバーの性格のタイプはどうか……とにかく徹底的に調べ上げた。

 だが、複雑なデータからパターンを見つけ出すことにかけて、ほぼ比類のない能力を誇るグーグルをもってしても、従来型の基準は何1つとして高いパフォーマンスを予測しないようだった。実際、チームのパフォーマンスに最も重要だと判明したのは、心理的安全性、すなわちチームメンバーが報復や叱責を恐れずに、各自のアイデアを表明できる能力だった。

 これはグーグルに限った話ではない。ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー・エドモンドソンは、病院のチームからオフィス家具メーカーまで、さまざまな状況における心理的安全性の重要性を実証している。エドモンドソンによれば、心理的安全性は、良好な雰囲気を増進するばかりでなく、学習能力を強化し、また行き詰まる傾向を弱めもする。

 マサチューセッツ工科大学とカーネギーメロン大学の研究グループが実施した別の研究では、メンバーがほぼ均等に意見を出し合うチームのほうが、1人か2人のメンバーが会話を牛耳るチームよりも、はるかに優れたパフォーマンスを示すことが判明した。したがって、情熱的で頭の回転が速いスティーブ・ジョブズのようなタイプは、誰も話に割り込めないほどアイデアをとうとうと述べ立てるので、実はイノベーションを台無しにしているのかもしれない。

 興味深いことに、極めてイノベーティブなチームは、アイデア次第で安全な場にもなれば、そうでない場にもなる。たとえば、ゼロックス・パロアルト研究所(PARC)の科学者2名、リチャード・ショープアルビー・レイ・スミスは、「スーパーペイント(SuperPaint)」と呼ばれる画期的なグラフィックス・テクノロジーを開発した。だがあいにく、このテクノロジーはPARCのパーソナル・コンピューティングのビジョンにはなじまず、2人は冷遇され、最終的には両者とも退職した。

 その後、スミスはもう1人のグラフィックスのパイオニア、エドウィン・キャットマルとニューヨーク工科大学でチームを組んだ。やがて、同コンビと合流したジョージ・ルーカスは、映画の特殊効果に新しいパラダイムを生み出す可能性をコンピュータ・グラフィックスに見出した。結局、この事業は別会社として独立し、スティーブ・ジョブズに買収された。同社、すなわちピクサーは、2006年に74億ドルでディズニーに売却された。

 多様性を重視する

 新たに人材を雇う際、多くのマネジャーはある特定のタイプ、通常は自分自身に極めて似た人材を雇う。このやり方は、仲間意識と快適さを生み出すうえで優れているが、問題解決に最適な環境を生むわけではない。実際のところ、多様性のあるチームのほうが、より賢明で、より創造性豊か、かつ事実をより徹底的に調べることが、さまざまな研究(邦訳はこちら)によって明らかになっている。

 チームメンバーの経歴や経験、および見解を絞り込むと、探索しうるソリューションスペースが限定的になる。その結果、思いつくアイデアの数が少なくなるだけで済めば、まだいい。最悪の場合は、固有のバイアスが常態化されて強化される環境、いわばエコー室を生み出すリスクを冒すことになる。

 つまり、同質のチームをつくることは、最良の答えがそこではないどこかでしか見つからないと約束しているに等しい。したがって、快適な環境の代わりに、見方や話し方、そして考え方が異なるメンバー同士が、互いの視点に疑問をぶつけ合うような環境をつくっていくべきだ。

 ここでマネジャーを悩ませるのは、多様性と心理的安全性を兼ね備えた環境を作ることが難しいことだ。多様性は往々にして団結を弱め、ひいては不安感を引き起こすことが、実証されている。疑問が突き付けられなければ、どんなチームも安全な場になりうる。優れてイノベーティブなチームは、多様性によって生じる緊張を乗り越え、建設的に働く術を習得する。

 チームワークを尊重する

 自著のリサーチ取材中に大変驚き、そして励まされたことの1つが、私が取材した人たちのほぼ全員が、とてもいい人だったことだ。取材対象になった人の多くは世界的に有名な科学者や経営幹部、起業家だったので、私はその多くが厚かましくて傲慢な人たちだろうと見込んでいた。だが実際は、まさにその逆だった。

 実のところ、ほとんどの場合、これら優れたイノベーターは友好的かつ寛大で、私の取材に心から興味を示し、役に立ちたいという純粋な気持ちを表してくれた。その態度にはあまりに一貫性があり、偶然とは考えがたかった。そこで、さらなるリサーチを重ねた結果、イノベーションに関しては、寛容さが競争上の強みになりうることを突き止めた。

 実のところ、あなたに必要なのは最高の人材ではなく、最高のチームなのだ。現代人が直面する問題は、孤高の天才が単独で働いて解決するには、あまりに複雑すぎる。そのため、最高のイノベーターは知識ブローカー(邦訳はこちら)である傾向が強い。言い換えれば、手ごわい問題の解決の糸口を見つける洞察力のある人物にアクセスできるよう、強固なネットワークを築いているタイプが多い。

 したがって、最も必要ないのは、ステレオタイプの「イノベーティブ風」人物である。無数のアイデアをとうとうとまくし立てるはた迷惑な乱暴者タイプだ。真に求められるのは、協働できて、聞く力があり、強力なネットワークを構築できる人材である。

 朗報は、このような人材がすでにあなたの組織にいることだ。彼らの声がかき消されることを、許してはいけない。


HBR.ORG原文: 4 Ways to Build an Innovative Team, February 13, 2018.

■こちらの記事もおすすめします
グーグルが自社のマネジメント手法を公開する、その3つの理由
350万人の調査データが示す、イノベーションを科学的に起こす方法
組織にイノベーションを生み出す、新たなリーダーシップとは何か

 

グレッグ・サテル(Greg Satell)
コンサルタント、講演家。 初の著書Mapping innovation(未訳)が、米国ミルウォーキーにあるビジネス書専門書店、800-CEO-READ が選んだ2017年のベスト・ビジネスブックスにランクインした。ブログ(Digital Tonto)やツイッター(@DigitalTonto)でも発信している。