小売業の12のトレンド(3)

6. マーケティングのデジタル化

 すでに多く小売業が新たなマーケティング方法を検討し、デジタルを活用することでROIを高めている。パーソナライズ同様にこれまではオンラインチャネルが主な舞台であったが、リアルチャネルへの適用が進んでいる。今後はさらにチャネル横断的に顧客の行動や態度変容をとらえ、シームレスにマーケティングを連携させることが見込まれる。実際に、アメリカではデジタルメディアでのマーケティング投資割合が5年前は24%であったが、2017年時点で既に42%に達しており、さらに5年後には62%ほどに達するとされている。

 一方、国内では2017年度時点で28%程度※5に留まっている。日本は欧米諸国と比べて小売業の寡占化が進んでいないことも一因し、デジタルマーケティングの前提となる顧客の理解やリーチするための手段の構築が単一企業で完結できないケースが多い。とはいえ、マクロ的な観点でいえば顧客理解を深めるための情報は爆発的に増えているのも事実である。

 ディスラプターと伍して戦うためには、単一企業で取得できる情報やリーチ手段に留まらず、業界・業態横断的に各社が持つプラットフォームを統合・相互活用するアプローチが期待される。実際に中国ネット通販2位の京東集団は、大規模商戦に向けてテンセントと顧客データを統合、Walmartとは会員システムと共通化することを発表するというような事例も出てきている。

7. ワークフォースレバレッジ・代替

 先述した通り、国内では労働力不足が深刻であり、その解決手段としてデジタルテクノロジーに期待が寄せられている。顧客に対し既存の提供価値を毀損しないことは当然のことながら、単なる効率化だけでなく、新たな体験を提供し得るものであることが望ましい。オペレーション効率化と同時に接客力を強化するという観点で、販売員にタブレット端末を提供する事例は既に多くの企業で採用されている通りであり、AppleやNordstrom, Macy’sにおいては顧客の購買履歴やオンラインでの行動などが把握でき、接客に役立てることができる。

 また、労働力を強化するという観点ではなく、一部もしくは大部分の機能をデジタルによって代替させるという事例も現れている。Amazon Goの登場はその最たる例であるが、日本でもCVS業態がレジ業務を自動化する実証実験を取り組んでいるのは周知の通りである。同様に、兵庫県に本社を置く株式会社ブレインはトレイ上に置かれたパンを一括で画像認識し、レジ精算に応用するサービスを展開している。

 Domino’s Pizzaはオーストラリアで自動運転ロボットによるデリバリーの試運転を開始しており、国内でもヤマト運輸、DeNA、ピザーラが提携し、自動運転での宅配サービスの実現を目指している。アメリカでは完全自動化のレストランEatsaも登場している。タブレットで注文し、自分の好みに合わせたカスタムもできる。商品ができあがったら専用のボックスから取り出す仕組みとなっている。

 Alibabaも2018年1月にウーファンジャイという無人レストランを開業し、入場から注文、決済までアプリで完結させることができる。近年は特に中国において無人店舗が加速している。3年間で10万店舗出店を公言しているAlibabaのTake Goや京東のD-Mart、Bingo boxなど複数の企業が参入している。それぞれ独自のテクノロジーを駆使してサービスを実現しており、継続的な進化の最中にあると言える。

 以上、すべての小売業にとって無視することができないトレンドについて述べてきた。破壊的成長を遂げる企業に席巻されないために、まだ追随できていないトレンドに関しては早期に検討を開始する必要がある。加えて、検討が必須とまではいかないものの差別化をするうえで重要なトレンドについても下記に簡単に紹介しておく。

・顧客のプロモーター化

 最もロイヤルティが高い顧客を企業のプロモーターとするトレンド。実際に企業サイトよりもFacebookにポストされたレビューを信頼すると答える顧客は71%※6にまで達している。Nespressoは非常に有名な例であるが、国内ではゾゾタウンのSNSアプリWEARが有名。

・コンテンツコマース

 顧客への情報提供自体を大きな付加価値とするトレンド。商品ではなく、それを通じて実現させる生活や体験を顧客に提案することを第一目的としており、商品はそれを実現するための一つの手段となる。インテリア・住宅のHouzzや女性向けファッションのRefinery29などが挙げられる。

・徹底的な透明性の担保

 顧客からの信頼を獲得すべく、価格、品質、環境・社会的な取り組みを可能な限り透明にするトレンド。テクノロジーの進化により可視化の容易性が増していることもこのトレンドを後押ししている。EverlaneではRadical Transparencyという概念のもと、原材料、設備費用、人件費、輸送費、関税といったコスト構造を開示。国内でも同様の概念の10YCというスタートアップが登場している。

・サーキュラーエコノミー

 あらゆる無駄をなくし既存の資産を使い倒すべく、事業サイクル自体を見直すトレンド。消費者の33%は社会的・環境的貢献をしていると感じるブランドを購入している。再生可能性、リサイクル、製品寿命の延長、シェアリング、As a servieという5つのキーワードのもと、ビジネスモデルを再定義する。

・地域密着回帰

 品揃え・サービスをエリアに合わせて適正化、地域コミュニティとのつながりを強化するトレンド。テクノロジーの進化により、AIによる個店別の品揃え・売り場の最適化、天候に合わせたレコメンデーションなど、さらに画期的なアプローチが可能になっている。