小売業の12のトレンド(2)

3. さらなるパーソナライゼーション

 アクセンチュア消費者調査の記事でも紹介した通り、日本は他の先進国と比較してロイヤルティ水準が低下しているが、それをクリアするカギとしてパーソナライゼーションをキーワードとした体験提供が有効であることがわかっている。オンラインにおいては、販促・レコメンドのパーソナライゼーションが行われるようになって久しいが、近年はその領域が3つの意味で進化している。

 一つはチャネルの拡大。中心的であったオンラインチャネルだけでなく、リアルチャネルにおいてもパーソナライゼーション実現が増えている。さらにバリューチェーンの拡大。販促だけでなく、製造や顧客サービスなど他の領域でも可能になっている。最後にメッシュの細分化。顧客のセグメント分けではなく、真の意味での個客最適を実現できるようになっている。あらゆる領域でお客様への生活提案をきめ細やかにできるようになるのだ。デジタル化により必要コストが実質的にゼロに近づいていることがこれらの進化を可能としている。

 たとえば、Coop Italiaでは実店舗においても顧客の手の動きに反応し、特定商品に対して関連商品のレコメンド、組み合わせのレシピ、アレルギー情報などが上部モニターに表示される技術を実現している。McDonald’sでも実店舗においてデジタルサイネージを使ったカスタムオーダー「Create your taste」というサービスを展開しており、簡単に自分好みのハンバーガーをカスタム・発注することができる。KFCでは中国の検索エンジン大手Baiduと協業し、表情・性別などの視覚情報から顧客の気分や興味を推測し、メニュー表示をカスタマイズする技術を実験している。

 また、商品・製造のパーソナライゼーションとして、AdidasやNIKEiDはカスタムシューズサービスを展開している。3Dプリンタの活用も進んでおり、これまでは企画段階での活用が多かったが、Adidasは実際に顧客に提供する商品として規模の拡大を計画している。ほかにも自分にフィットするイヤホンや眼鏡を3Dプリンタで製造するサービスも登場している。

4. 時間的自由度の適正化

 Webrooming/Showroomingという言葉が聞かれるようになり久しいが、顧客はあらゆるチャネルで態度変容を起こすようになっている。自在にチャネル間を移動する顧客に対し、ニーズが高まったタイミングを逃さず、適正な商品をできる限り素早く提供する必要がある。

 Amazon に代表されるように即日配送を実施する小売りは増えている。アメリカの小売り大手Targetは、スタートアップのCurbsideと組み、スマホでの買い物代行サービスを実施。30分から1時間後に自宅や専用窓口での受け取りが可能となっている。中国でも同様に時間的な制約を解消させるような動きが活発化している。Alibabaは新小売りという概念のもと「オンラインとオフライン、現代的な物流を融合させた小売り」と定義し、リアルチャネルの店舗拡大を加速させている。その一つである生鮮小売りのフーマーシェンセンからは半径3km以内であれば30分以内で無料配達というサービスを展開しており、上述した7Freshも同様のサービスで対抗している。

 手段として外部との提携も有力な選択肢となり得る。WalmartはUberやLyftと提携し、オープンワークフォースを使ったラストワンマイルの実験を行っている。国内でもシンガポールの買い物代行スタートアップHonestbeeがサービスを開始しており、生鮮品は最短1時間で届けてくれる。

 また、Amazonは今後の発展性を見据えて事前に配送モデルについての特許を取得している。たとえば、「予測出荷」の概念で、顧客が注文する前にあらかじめ商品を予測して出荷する特許、トラックに3Dプリンタを搭載することでさらなる配送時間短縮を実現させる特許など、まだ実現段階には至っていないものの今後のテクノロジーの発達によって効果的となる可能性もあり、同社の姿勢が伺える。

5. 店舗の再定義

 チャネルの多様化が進むとともに、実店舗においてどのような役割を果たすべきか再定義が求められている。近年、特にAlibabaの例を上述した通り中国においてオンラインを主戦場としてきた小売りが実店舗を持つ小売りと統合・提携する例が増えており、オンラインプレーヤーもこれまでの弱点を補おうとする動きが活発化している。実店舗を主戦場としてきた小売りにとっては、「固定的な場所で誘客し商品を販売する」という古典的な概念から脱却し、新たな役割と形態の多様化を検討する必要がある。

 物理的な接点という利点を活かし、オンラインチャネルに対して提供価値を差別化するという観点と、実店舗アセットを有効活用するという観点があり、具体的には、実店舗ならではの接客・顧客体験の創出、移動型店舗、ポップアップ店舗、配送拠点化、情報収集拠点、店舗シェアリングなどが挙げられる。

 Tescoはデジタルサイネージショップを駅のなかなどに展開、在庫を持たない店舗として顧客との接点を獲得・強化している。同様にNordstromも在庫を持たない「Local」業態を展開。ゆったりした試着室でワインやコーヒーを飲みながらモバイルアプリを使って接客を受け、商品は後日配送や受け取りができる。また、スウェーデンのWheelysは中国で移動式のコンビニ「Moby Mart」を展開している。AIのバーチャルアシスタントが接客し、キャッシュレスで買い物ができる。

 Argosは既存の実店舗の店内スペースを他小売業とシェアするパートナリングモデルを展開している。元来はショッピングモールなど大商圏の大型店舗でよくみられる形態ではあるが、小商圏の小型店舗でも同様の取り組みが始まっている。国内では那覇でファミリーマートと吉野家の一体型店舗が登場しイートインスペースを共有化するといった事例も登場している。