頭を柔らかくして、自分たちのモデルを見つける

 多くの人は、家庭でのイノベーションよりも、仕事でのイノベーションに重きを置いている。そこで、家庭の役員室(食卓)にちょっとしたブレインストーミングを持ち込んでみよう。

 自分たちのモデルは、どのようなものだろうか。2人とも、現在決められているそれぞれの役割に満足しているのか。両者あるいはどちらかが、そろそろ話し合いたいと感じている、しまっていた夢はないだろうか。

 以下に、私が目にした夫婦のモデルのいくつかをご紹介しよう。2人で明確化し、話し合い、楽しみ、一時的あるいは生涯にわたって取り入れているものだ。どのモデルも、両者が足並みをそろえ合意している限り、少なくとも一定期間は有効だ。独自のキャリアモデルを設計された方は、私に教えていただきたい(eメール:martha@20-first.com)。リストに追加しようと思う。

 ●シングル・キャリア

 従来からある典型的なモデルだ。夫婦の1人が、すべてを決定づけるキャリアを持っていて、配偶者と子どもはそのキャリアに従う。

 このモデルでは往々にして、高給を得ることが可能で、夫婦の1人が仕事に全面的に注力できる。パートナーは他のすべての役割に対応できるが、収入のことを考える必要はない。

 だが、このモデルの夫婦は、予期せぬ形で、あるいは完全に、収入を失うリスクがより高い。働いていない配偶者は、結果的に別居あるいは離婚した場合、立ち直るのがより困難で、年金の備えもないことが多い。

 多くの女性経営幹部(ほとんどは働いている配偶者がいる)にとっての苦労の1つは、働いていない妻を持つ男性ばかりの経営チームに属していることだ。シングル・キャリアのこれら男性陣がつくり出す経営チームの文化が、「四六時中いつでも仕事にコミットしよう」という方向へと傾いた場合、彼女らにとっては競争上不利となる。なぜなら専業主婦がいる男性陣は、四六時中のコミットが可能だからだ。

 ●リード・キャリア

 シングル・キャリアから派生したモデルだ。一方のキャリアが明らかに支配的で、夫婦の生活の場所や、転居先を決定づける。パートナーは、パートタイムや融通のきくフリーランス、あるいは教職やオンライン作業などのキャリアを持っている。シングル・キャリアと同じ利点があり、欠点はいく分緩和されている。

 たとえばジョー(女性)は、石油会社の重役である夫に付いて世界を飛び回っていたが、その役割をみずからの仕事へと転換させた。彼女は自己改革法に関する本を著し、オンライン編集者および著述コーチとなった。

 ●交替型キャリア

 多くの夫婦は、2人にとっての「平等な機会交替」を選択する。それぞれが次の昇進や地理的な移動に対する優先権を持ち、パートナーは役割の調整に合意する。

 このことは必ずしも、パートナーと家族が付き従うことを意味するわけではない。場合によっては、家族は1ヵ所に留まり、あちこち飛び回っている配偶者が長時間通勤する。多国籍企業では、別々に住んでいる夫婦は驚くほど多く、その期間が長年続いていることもある。

 このアプローチは、あまり頑なに守ろうとすると、いく分「取引」のようになる。「私の番」という意識が強すぎると、夫婦が目指しているバランスが崩れるのだ。

 ヘレンと夫のロブは、どちらも大いに成功している、非常に著名なCEOだ。2人は1年を通じ、週ごとに役割を交替していた。それぞれが2週間のうち1週は、自分の仕事、旅行、重要事項に完全に注力する。もう1週は、他のすべてのことを担当する。これにより、2人は両方の役割を十分かつ定期的に楽しむことができていた。

 ●並行型キャリア

 それぞれが似たような、非常に有力なキャリアを持つ夫婦で、「パワー・カップル」と呼ばれることもある。最近増えているこのタイプの夫婦は、互いに補強し合う職業的ネットワークと知識を持ち、互いのキャリアを強化し合っていることが多い。米国のドラマシリーズ『ハウス・オブ・カード』で見られた夫婦(ホワイトハウス入りを目指す主人公と、非営利法人の代表を務める妻)がよい例だ。

 このような夫婦は、仕事の話が好きで、互いの仕事で何があったかを共有する。それが互いの仕事のためになるからだ。互いに学び合い、相手の会社から買い物をする。

 ジュリエットとアンドリューは、それぞれ異なるが関連する事業を営み、一方は営利事業を、もう一方は非営利事業を率いている。2人ではうまくやっているが、このような場合は家族(子ども)に犠牲が及びがちとなる。子どもは十分な関心を払ってもらえない。両親が互いとの会話で夢中なのだ。

 また昨今、ともに有力なキャリアを持つ夫婦は、雇用主にとって特に悩みの種である。このような夫婦は、地理的な移動がますます困難になるからだ。配偶者が担っている上級職は、他の場所での再現や移転が必ずしも容易ではない。

 ●補完型キャリア

 夫婦のキャリアにおける多様性は、あらゆるチームの多様性と同様に、恩恵をもたらしうる。仕事の性質、キャリアフェーズ、繁忙期、時間帯などが異なる夫婦は、往々にして生活をうまく回しやすい。年間あるいは人生の段階において、両者の大変な時期が重ならないため、やりやすくなるのだ。これは、会社勤め、アカデミック職、起業家、著作家などさまざまな職業についていえる。

 ジョージとアンは、日勤と夜勤という面で多様化を図っていた。夜勤で働く看護師のアンと、昼間働くエンジニアのジョージは、朝食と夕食を一緒にできる。

 ジュリエットは、子どもが幼い時分には、柔軟に働くフリーランスだった。夫のジョンは会社勤めで、社会的責任に関する、みずからの仕事が大好きだった。子どもが大きくなると、ジュリエットは事業を立ち上げて軌道に乗せる。ジョンは輝かしいキャリアを早期に退き、いまや事業が成功して高所得を得ている妻とともに、世界中を飛び回っている。

 キャリアが大きく異なることのもう1つの利点として、キャリアが似ている場合に生じうるバッティングと争いを避けることができる。たとえば、夫婦ともに弁護士やコンサルタントで、昇進のペースが大きく異なってしまう場合は対立につながりやすい。子育てに関する選択が原因であれば、なおさらである。仕事の性質が違えば、成功基準やサイクルが異なり、うまくいく可能性が高い。

 どのモデルであれ、成功の秘訣は、2人でともに設計することだ。仕事人生が長期化しているなか、1つのモデルから別のモデルへと変えてもよいし、それすらも計画の一部にすぎないかもしれない。だが、上述のようなモデルを立てることで、2人の生き方が明らかになり、人生の諸段階における選択の利点とリスクを認識しやすくなる。ファミリーキャリアを組み立てれば、柔軟性、安定、そして選択肢が生まれるのだ。

 その結果、2人は支え合う配偶者となり、人生のビジョンを共有する。自分と相手のキャリア上の選択に、同等の努力を注ぐ。これにより、双方への恩恵が飛躍的に高まっていくのである。


HBR.ORG原文:Being a Two-Career Couple Requires a Long-Term Plan, February 26, 2018.

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アビバ・ウィッテンバーグ=コックス(Avivah Wittenberg-Cox)
ジェンダー・バランスの支援を専門とするコンサルティング会社、トゥエンティー・ファースト(20-first)のCEO。Seven Steps to Leading a Gender-Balanced Business(未訳)の著者。