準備をする

 当たり前だが、恐怖を鎮める第1歩は、しっかり準備することである。

 まず、いちいち考える必要がないほど、話す内容をよく理解する。また、必要な資料や機材が用意できているか、十分に余裕を持って確認しておくのも重要だ。リラックスしつつも集中した状態でいたいから、音声が出ないなどと、直前までバタバタしたくはない。細かい点まで確実に押さえるために、チェックリストをつくると便利である。

 できれば、本番で使う視聴覚機器で予行演習をするとよい。そして、友人を集めてスピーチのリハーサルをしよう。そうすることで、原稿を見直せるし、友人たちは意地悪な質問したり、無関心な聴衆を装ったりして、協力してくれる。いちばん厳しい状況を想定して練習しておけば、本番になって慌てることはないだろう。

 本番前の儀式やルーティンも、自分の気分をうまくのせるのに役立つ。本番の直前に好きな歌を聞くのもよい。マンディには、ふさわしい精神状態に入るための魔法の言葉がある。ステージに上がる直前に「You got this.(あなたならできる)」と自分に言い聞かせるのだ。

 現実を見る

 恐怖には現実的なものもあれば、そうでないものもある。

 持ち時間が30分しかないのにスライドが100枚もあるなら、時間が足りなくなるかもしれないという恐怖はまさに現実問題なので、スライドを減らすべきだ。しかし、話の途中で聴衆の誰かがブーイングするかもしれないという恐怖が現実になる可能性は、かなり低い。

 マンディは、不安で現実を見失わないよう、少し工夫している。大事なパフォーマンスの前、眠れないようなときには、紙に線を引いて3つの部分に分ける。第1の部分には恐怖の内容を書く。第2の部分には恐怖が現実になった場合に起こりうる最悪の事態を書く。そして第3の部分には、恐怖が現実になった場合に起こりうる最良の事態を書くのである。

 たとえばステージ上でつまずいて転ぶのが不安だとしよう。最悪の事態は、誰かがその場面を撮影してYouTubeにアップし、一気に拡散してしまうことだろう。しかし、最良の事態を考えれば、その動画が、誰にでも間違いはあることをファンたちに示し、ついでに彼女の最新アルバムに気づく人も増えるかもしれない。

 人は誰でも悲観的に考え、ものごとを極端に見る傾向がある。恐怖は現実的にとらえよう。

 準備を怠らず、現実を見ることには、無意味な恐怖を鎮める働きがある。次に述べる3つには、逆に自信を増す働きがある。