燃え尽きを回避しながら
高いエンゲージメントを保つには

 人事部門はこれまで、従業員のエンゲージメントをどう高めるかばかりに着目してきたが、今後は、より細やかなアプローチが必要だ。すなわち、エンゲージメントを高めると同時に、いかに従業員の燃え尽きを防ぐか、である。

 この点については、私たちが発見した「エンゲージメント最適化」と「高エンゲージメント・高疲弊」グループの大きな違いが、1つの手がかりになるだろう。

「エンゲージメント最適化」グループの従業員の半数は、リソース(上司からのサポート、報酬と顕彰、仕事に対する自信など)が豊富で、要求レベルは低いと答えていた。つまり、仕事量が少なく、面倒なペーパーワークも少なく、集中力や注意力についての要求も低~中程度だった。対照的に「高エンゲージメント・高疲弊」グループでは、高いリソースと低い要求に恵まれていると回答した人はごく少数(4%)で、大多数(64%)の回答は高いリソースと高い要求を示していた。

 この結果に、経営幹部や管理職にとってのヒントがある。「エンゲージメント最適化」を目指して従業員をサポートする場合、どこから手をつけるべきか。従業員のエンゲージメントを高めるには、仕事を十分にこなし、気分よく働き、仕事で感じたストレスから回復できるだけの、十分なリソースを提供することが重要だ。

 多くの企業の人事部門では、従業員がストレスを感じていることを考慮し、ストレス対策のための健康プログラムを実施している。よく見られるのは、健康的な食事や運動、マインドフルネス瞑想などの指導だ。

 ただ、慢性的なストレスが従業員にとってよくないのは明らかだが、そのストレス対策として企業がまずとるべきなのは、こうした健康プログラムではない。もちろん健康指導は有効なのだが、仕事そのものに注目するほうがより有効な手段であることを、調査データは示している。人事部門は現場の管理職と協力して、従業員への要求レベルに気を配り、要求とリソースのバランスにも注意するといい。従業員への要求が高いほど、サポートや感謝、回復の時間もより多く必要となる。

 では、高い目標設定はどうだろうか。

 挑戦がモチベーションを生むと言われてきた。それは真実かもしれないが、高い目標への挑戦には大きなコストが伴うことを忘れてはいけない。とりわけ、達成するのが困難な目標を前にすると、きわめてモチベーションの高い人でも不安とストレスを感じるだけではない。疲弊し切ってしまうこともありうる。

 それだけでなく、高い目標を設定したときの結果は必ずしもよいとは限らない、という研究結果がある。それなりの目標を目指すより、野心的な目標を追うほうが高いパフォーマンスをするという人もたしかにいる。しかし多くの人にとって、高すぎる目標は、モチベーションの低下を招き、愚かなリスクをとりがちになり、時にはあっさり諦めることになる。

 経営幹部や人事担当者は、要求レベルを少し下げることで従業員を助けることができる。目標を現実的なものにすることも一例だ。

 スキルが高く、仕事も早いがゆえに、より多くの仕事を押しつけられがちな従業員には特に目を配り、負担を調整する必要があるだろう。あるいは、従業員が使えるリソースを増やすのも手だ。時間や資金といった物質的なリソースに加え、職場における共感や友情といった無形のリソースや、勤務時間外は仕事から完全に解放するといったサポートも含まれる。リーダーは、勤務時間外に部下にメールしたりせず、夜と週末は仕事をしなくてよいというルールを設け、ランチタイムもしっかり休憩を取れるようにすれば、「バランスが大事だ」という一貫したメッセージを確実に伝えることができる。

 調査結果のデータは明快だ。エンゲージメントは重要であり、リーダーとして、従業員として、目指すべきものだ。ただし、そこで望ましいのは「賢いエンゲージメント」である。それは、熱意やモチベーション、生産性をもたらし、燃え尽きとは無縁のものだ。

 従業員への要求を増やすなら、リソースも増やしてバランスを取る必要があるだろう。重要な納期の前などストレスの強い時期には特にそうだ。


HBR.ORG原文:1 in 5 Highly Engaged Employees Is at Risk of Burnout, February 02, 2018.

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エマ・セッパラ(Emma Seppala)
博士。スタンフォード大学共感と利他精神研究教育センターのサイエンス・ディレクター。『自分を大事にする人がうまくいく』の著者で、サイトFulfillment Dailyの創設者。ツイッター(@emmaseppala)と自身のウェブサイト(http://gss.norc.org)でも発信中。

ユリア・メラー(Julia Moeller)
博士。ドイツのライプツィッヒ大学助教授。米エール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスではコンサルタントを務める。学校や職場におけるモチベーションと感情が研究テーマであり、とりわけ複雑な感情に注目している。ツイッター(@passionresearch)および自身のウェブサイトでも発信中。