エンゲージメントは
本当に活躍を意味するのか

 従業員のエンゲージメントは、人事担当にとっては大きな課題である。毎年のように、企業幹部や研究者が口にするのが、ギャラップによる衝撃的なデータだ。そこには、米国の働き手の10人中7人までが、「自分のエンゲージメントは高くないと思う」と答えるというデータが示されている。いかにして社員のエンゲージメントを高めるか、それはあらゆる企業やコンサルタントにとっての緊急課題なのである。

 エンゲージメントがもたらすポジティブな影響は、多岐にわたる。生産性や仕事の質の向上、安全性の向上、離職率の低下などは一例だ。こうしたポジティブな影響は、幾度となく証明されている。エラスムス大学ロッテルダム校の労働・組織心理学教授、アーノルド・バッカーとその研究チームは、エンゲージメントを「職場での活躍」の経験と直結させているほどだ。同様に、ジョージア大学の教育心理学教授エイミー L. レシュリーらによる論文は、学校における学生のエンゲージメントの高さが「活躍」の兆候だと結論している。

 エンゲージメントには確かに、プラスの影響がある。しかし、ほとんどの人が気づいているように、ある目標に向けて本気で努力するとき、ポジティブとは言えない影響も生じる。それは、高レベルのストレスである。このあたりから、事はとても微妙かつ複雑なものになっていく。

 私が勤めるエール大学のセンター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスが、ファース財団の協力のもとで実施した最近の調査では、エンゲージメントがポジティブなだけの要素だとする見方に疑問を投げかけた。

 このアンケート調査では、米国の1000人を超す従業員について、エンゲージメントと燃え尽きのレベルを調査した。たしかに、一部の従業員にとって、エンゲージメントは完全にポジティブなものだ。このアンケートでもおよそ5人に2人は、エンゲージメントが高く、燃え尽きの兆候は低かった。また、彼らはポジティブな結果(ポジティブな感情の発生、新たなスキルの習得など)を報告する例が多く、ネガティブな結果(ネガティブな感情の発生、転職の検討など)は少なかった。この手の働き手を「エンゲージメント最適化」グループと呼ぶことにする。

 だが同じ調査において、従業員の5人に1人は、エンゲージメントが高く、燃え尽きも高かった。この人たちを「高エンゲージメント・高疲弊」グループと呼ぼう。

 このグループは仕事には熱心だが、複雑な感情を抱いていた。仕事への関心が高い一方で、ストレスやフラストレーションも高いレベルを示したのである。この一見模範的な従業員たちは、スキル習得率の高さなど望ましい行動を示すものの、調査対象中で最も高い転職検討率を示した。その率は、エンゲージメントが低いグループをも上回っていた。

 つまり、モチベーションが高く、勤勉な従業員を企業が失うリスクがあるとしたら、その理由はエンゲージメントの不足ではない。それは、高いストレスと燃え尽きを同時に経験するからなのである。