従来の「リーダー」は要らない

 ホラクラシー型の組織が有する特色の2点目は、リーダーシップの在り方が従来とはまったく異なることである。

 従来のリーダーシップとは、一部の経営トップ層が戦略や方針を策定しフォロワーに実行指示を落とし、プレッシャーを与えて進捗を管理するトップダウンのリーダーシップである。それはリーダーが知識や経験で答えを知っている場合ややるべきことが明確な場合に有効である。しかし、限界費用ゼロというデジタル化のインパクトに着目して、単位時間あたりの打ち手の数と成功確率を指数関数的に増やしていくことがゲームのルールである現代においては、過去の勝ち筋というアセット、および、それに基づく演繹的、あるいは帰納的推論というケイパビリティしか持たないリーダーは、不要であるどころか、むしろ、きわめて重篤な足かせにしかならないことは明白であろう。

 デジタル時代において重要になるのは、従来のリーダー vs. フォロワーという構図ではなく、端的に言えば7つのリーダーシップ(図3)を、組織を構成する全員が、時と場合に応じて分担的に担うモデルである。

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出所:アクセンチュア

 オランダ最大の地域看護師組織として在宅ケアサービスを提供しているBuurtzorg(ビュートゾルフ)は新しいタイプのリーダーシップを発揮している組織の一つである。Buurtzorgの看護師たちは各地域に10~12人の独立したチームを組成し独自にチームを運営している。チームを管理するヘッドクォーターを持たず、またチーム内にもミドルマネジメントや固定的なリーダーはいない。患者受け入れ計画の策定、チーム規模の拡大や生産性の向上策の検討、メンバー実績の評価などの重要な判断を一人のリーダーに負わせず集団で決めている。

 そこでの生産的で健全な対話のため、看護師たちは傾聴やコーチングなど、サーバントコミュニケーションスキルを獲得するトレーニング受講機会が与えられる。またチーム内で解決できない問題に直面した場合は、高い専門知識を持つ看護師からなる「地域コーチ」が助言や解決のヒントを与える。コーチはミドルマネジメントとは異なり、チームに対して意思決定権や数値責任を持たない。コーチの役割は、チームが自分たちで解決策を見つけられるように知識や示唆に富んだ問いを投げかけ、インスピレーションを与えることである。これらのリーダーシップスタイルを取ることにより看護師チームは患者やチームに対して自らがベストだと考える判断や行動を行うことができる。その結果、看護師の心には高い満足度が醸成され転職してくる看護師も後を絶たない。2006年に10名の看護師で開業した組織が2014年には8,500名に至った。