「社是」を真面目に考える

 まず、このような自律型組織を機能させるために重要となることは、一人ひとりの意思決定・行動の基準となる、組織・個人で共通の明確なWhy(=なぜ・何のためにそれに取り組んでいるのか)を持つことであり、その共通のWhyに向かっておのおのが自らの役割を果たしていくことである。

 経営理論家のサイモン・シネックは、人々はWhat(何をするか)ではなくWhy(=なぜ・何のためにそれに取り組んでいるのか)によって思考を規定し、行動すると提唱している。人の意思決定・行動は具体的な説明や数値などの理屈だけでは行われず、内側の感情が最終決定するのだが、このWhyこそが人々をインスパイアし、感情を動かし、モチベーション・エネルギーの源泉となっていく。

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出所:アクセンチュア

 自律型組織の個々人がオーナーシップを持ち、Whyをプリンシプルとして自ら意思決定・業務推進を行うことで生産性が高まり、組織の加速度的なイノベーション実現へとつながる。実際にExponential Growthを実現している企業においてはこの”Why”が明確である。Googleは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」、Facebookは「世界をもっとオープンにし、つながりを強める」、Appleは「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える」といった壮大な”Why”(社会課題の解決)を掲げ、この”Why”に共感した人々が同じ目的の実現に邁進し、価値を生み、社会から支持を得ている。

 翻って日本の企業においても、かつてはWhyが明確であり、かつ、多くの人々の共感を呼ぶ中身を標榜していた企業が多かったはずである。にもかかわらず、Whyの議論になると、あたかも上述したような海外のディスラプターに固有の特性として注目が集まってしまうのはなぜなのだろうか?

 こうした点に関して、ベイン&カンパニーが提唱しているFounder’s Mentalityに着目したい。同社はいわゆる「大企業」となっても企業価値を継続的に成長させている企業の一つの特徴として、かつて創業者が持っていたメンタリティと行動様式が今日においても組織全体に維持されていることを指摘している。

 Founder’s Mentalityが希薄となってしまった組織をどう修正するべきかの詳細についてはベインの研究に譲るとして、本稿においては現在、掲げている自社のWhyが、全社員が最上のパッションをもって仕事にあたるくらいまでに彼女ら、彼らの思考様式、行動様式に影響を及ぼしているかを問うことの重要さを指摘したい。特に冒頭に述べたデジタル化のインパクトやスピード感から見て、明らかに陳腐化しているものについては上書きを考えるべきであるし、一度、決めたら、しばらくは不退転の決意で……のような古臭い考え方を消し去ったうえで、Whyを常態的に上書きすることを目指すべきであろう。