テクノロジーの急速な進化とビジネス環境の大幅な変化により生まれた予測不可能な現在の状況はVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))と言われてきた。予測不可能なデジタル時代の事業活動における勝利のルールとはどのようなものか。また、あるべき組織の姿、求められるリーダーシップとは何か。

デジタル化の本質とは何か

 デジタルが企業価値の成長を考えるにあたっての最重要テーマとなり久しい。ビッグデータ、モバイル、クラウド、IoT、AIといったテクノロジーをいかに活用していくかについて多くの企業が取り組んでいる。デジタル時代のリーダーシップの在り方を考えるうえで、まずはデジタル化の本質とは何かについて確認をしておきたい。

 デジタル化とは、事業や業務が情報に転換されることである。ひとたび情報化されると、その事業・業務はテクノロジーの進化にさらされる。テクノロジーの世界は、倍々ゲームで指数関数的に進化している。本年1月のダボス会議でカナダのトルドー首相は「いまほど変化のペースが速い時代は過去になかった。だが今後、いまほど変化が遅い時代も二度と来ないだろう」と述べたが、指数関数的な変化の核心をついた発言であろう。

 すでに言われているようにデジタル化によって事業活動に伴う限界費用はゼロに近づいていく。定型業務は、AIやRPAにより自動化されるため、オペレーショナルコストは大きく下がり、テレビ会議やチャットツールなどによりコミュニケーションコストも大きく下がる。また、大量に蓄積されたデータやそれを分析するエンジンの高度化により、高度のカスタマイゼーションも従来よりも圧倒的に低いコストレベルで実現可能となる。

 このようにさまざまな限界費用が0に近くなると試行回数を増大させることが可能となる。多額のサーバーを購入しなくても、クラウドサービスを使えば即座に事業を開始することができる。事業・サービス成功の確率が千三つのままだとしても、試行回数の増大により、成功する事業・サービスの数を増やすことができる。さらには上述したようなカスタマイゼーションコストの低減は事業成功の確率も向上させることになる。

 こうした結果、成功した事業は従来よりも圧倒的に高い収益レベルをもたらすこととなり、それを再投資することによって倍々ゲームが加速することになる。さまざまな成功サービスを積み上げた社会的変化が破壊的イノベーションである。当然のことながら、AppleのiPhoneやAmazonのAlexaなど、単体商品/サービスのみが破壊的イノベーションではなく、彼らがつくり出したエコシステムに、世界中のアプリ会社がさまざまなサービスを開発・提供していくことが、消費者体験を大きく変容させているのである。

 この「情報化→限界費用の0化→試行回数の増大化→成功事業の増大化→破壊的イノベーションの発生」がデジタル化のインパクトであり、このようなインパクトがトルドー首相の発言の通り、今後も指数関数的に拡大していくことにデジタル化の本質があると言えるだろう。

 このようなテクノロジーの急速な進化、結果としてのビジネス環境の大幅な変化により生まれた予測不可能な現在の状況はVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))と言われてきたが、前述したようなデジタル化の本質に照らし合わせてみれば、むしろ、事業活動における勝利のルールは、むしろきわめてシンプル、明確になっているという見方をすべきであろう。