旅をすることで新たな世界に身を投じれば、エンパシーも向上する。

 米国人を対象とした前述の研究では、外国旅行の経験がある被験者のほうが、表面的な属性(年齢や性別、人種、民族)よりも踏み込んだ情報を得るまで、相手のことを判断するのを保留する能力が高かった。また相手の行動が、根深い性格属性を反映したものなのか、あるいは挙動に影響を及ぼしうる多様な状況要因を示したものなのかを見分ける点においても、外国旅行経験者のほうが長けていた。

 中国の研究チームが197人の成人を対象に、旅行の前と後に実施した調査でも、同様の影響が認められた。日常の社会的交流における、標準的な価値観や行動様式に横たわる明白な文化的違いを乗り越えようとする力量に、旅が影響を及ぼすことが判明したのである。

 多くの国へ旅行した人ほど、見知らぬ人に対してより広い寛容と信頼を示す。それは見知らぬ人ばかりでなく、自国の同僚や友人に向ける態度にも変化を及ぼしていた。新しい知識や見解、スキルを持った人を高く評価するようになったのである。

 スリランカ滞在中、私は街角で、ガラスケースに入った象牙の仏像の周りが、点滅する派手なネオンライトで飾られているのを目にした。私にはミスマッチに見えるが、現地の人たちにはそうではないのだろう。

 また数ブロックごとに、アサルトライフルかマシンガンを持った警官1名が配置されていて、当初はそれが威圧的に思えた。だが間もなく、警官が笑顔でおしゃべりする姿をよく目にするようになり、彼らがただ、制服を着て任務を遂行していることに気づいた。

 エリプティカル・マシンを使ってトレーニングをしようとジムに行ったとき、天井からぶら下がったテレビ3台が、カバディの試合を映し出していた。私の目には、十数人の大人が鬼ごっこをしているようにしか見えない。スポーツの世界がいかに多様であるかを実感した。