B2C2Bで顧客体験をつくる

 B2B企業、そのなかでもとりわけ製造業は、いま現在IoTによる急速な変革の波にさらされている。すでに80億台超のデバイスがインターネットに接続しており、2030年にはその数は1兆台に達すると予測されている。*3

 製品にセンサーを埋め込み、インターネットと接続することによって、企業は膨大な顧客の行動データを手にすることになった。そして、この膨大な顧客の行動データはB2Bビジネスの価値競争の戦場を大きく変えている。顧客企業にとってのビジネス上の成果に着目した価値提供(アウトカム・ベースド・ビジネス)への転換である。企業は製品の品質競争から、顧客データの解析に基づく顧客行動の最適化(およびそれに基づくビジネス成果の創出)競争へと舵を切ることになった。

 顧客企業のビジネス成果の創出に貢献するためには、顧客企業のビジネスをより深く理解する必要がある。そのために必要な視点が、”B2C2B”である。顧客企業を理解するためには、その先にいる顧客の顧客が何を求めているか正しく把握することが求められる。企業は顧客企業との間にパートナーとしての新たな関係性を築き、ともにその先の顧客に対して価値を提供することが求められている。顧客との新たな関係性の構築に向けては、製品・サービスの機能的な便益だけでなく、顧客企業の事業運営に対する全体的な支援の提供がカギとなる。顧客企業のビジネス上の成果を見極める洞察力と顧客の顧客の利益まで見据えたソリューションの開発力がその実現を下支えする。

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出所:アクセンチュア

 製薬業界では顧客の顧客である患者に目が向きつつある。Sanofi社とVerily Life Sciences社(Alphabet傘下)が2016年に設立したジョイントベンチャーであるOnduo社*4は、糖尿病患者に向けた包括的な支援サービス「Virtual Diabetes Clinic」を提供している。患者の健康的な日常の実現に向けて、血糖値管理のスマートデバイス、管理プラットフォーム、専門家による相談・支援サービスを用意している。患者がサービスを利用することによって、治療を担当する医師は、患者の血糖値の状態、インシュリン注射の実施履歴を正確に把握することができるようになり、治療に役立てることができる。本来の顧客である医療機関に薬剤を提供するだけでなく、その先の患者を見据えたサービスを提供することで、より直接的に顧客の成果に貢献する価値の提供を図っている事例である。Onduo社では今後もさまざまな患者団体や医療機関との連携を進め、よりその価値提供の幅を広げていくことを画策している。

 製品・サービスの直接的な便益の提供に留まらず、顧客企業のビジネス上の成果を見据え、その実現に貢献する一連の支援を提供することこそが、優れたCXの提供であると言えよう。そして、そのためには”B2C2B”で顧客の顧客を見据え、顧客企業をより深く理解することが必要である。