エンドユーザーの
プロシューマ化が進む

――「デジタル化」と「分散化」が進むと、次に何が起こると考えられますか。

 太陽光発電によって自宅で効率よく発電できるようになり、余った電気を売ることができるようになるので、私たちエンドユーザーのプロシューマ(生産活動を行なう消費者)化が進みます。

 現在もフィードインタリフ(固定価格買取制度)がありますが、買い上げ保証がついているので、完全なプロシューマとはいえません。2019年11月にはフィードインタリフの契約期間が終わるユーザーが出てきます。そうすると、いよいよ余った電気を誰にどう売ろうかということを本気で考えるようになり、本当のプロシューマが生まれてくるでしょう。

 こうしたプロシューマは2019年11月時点では60万~70万世帯ですが、そこから毎年20万~30万世帯ずつ増えて、2025年には250万世帯、2030年には350万世帯くらいになると見ています。日本の戸建てストックは2660万戸ですから、10%強がプロシューマになります。そうなると、電力市場の様相もずいぶんと変わってきます。エネルギーは買うものではなく、つくったりシェアしたりするものになるでしょう。

 さらに、電気自動車の技術が進展し、蓄電技術が普及すると、電気自動車が電力を備蓄する役割を担うようになるでしょう。それを有効活用して、大量導入されたDERの電気を無駄なく消費すること、前述したBERが提供している価値を代替することが可能になります。

 また、冒頭に述べたように「モノ売りからコト売りへ」というトレンドの下では、クルマはもはや個人が所有するものではなく、サービス事業者が所有・管理するようになります。そして、そのサービス事業者、あるいはアグリゲーター(余剰となった電力を集める事業者)が多くの電気自動車に搭載されている蓄電池の稼働状況や充放電を管理するという世界が描けます。これは、運輸システムと電力システムが、新たな社会システムとして融合することを意味します。

2050年に向けた
マイグレーションプランが重要になる

――2050年にエネルギーがタダ同然になるのであれば、それまで何もせず、従来型のエネルギーを使いながら待っているという選択肢もあるのでは?

 分散化が進展すると、BERは設備の所要量は変わらないにもかかわらず、電気を売る機会が減り、価格も下がります。つまり、市場任せにするとBERの存続が難しくなって、必要な設備が維持できるかどうかというアデカシー確保の問題が深刻化することを意味します。したがって、マイグレーションプラン(移行作業計画)が非常に重要になります。

 例えば、送電設備の減価償却期間は30~40年なので、今つくると2050年にもそれを使えるだけの耐用年数があります。インフラも長期的なものと短期的なものとを分けて計画を立てる必要があります。

 なかでも、電気自動車と連携するためのネットワークは、一度普及し始めると、元に戻れないため、最初がとても大切です。その入口が日本と世界とで異なると、ガラパゴスになりかねない。この新しいゲームのルールづくりにおいて、日本が産業間の融合によってイニシアティブを握ることが望まれます。