『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 2018年3月号の特集は「顧客の習慣のつくり方」と題して、選ばれ続ける商品やサービスの秘訣に迫る。

 マーケティング担当者が新しい商品で消費者の心をとらえようと懸命になる一方、市場には数十年も前から売れ続け、いつも選ばれている商品が数多く存在する。近年、企業の努力に反して、多くの消費者は「自分に馴染みがあって、簡単に買えるもの」を求めていることがわかってきた。今月号の特集では、いつも選ばれる商品、長く売れ続ける商品は、どのようにしてそのようなポジションを築いたのか、行動科学などの知見から検証する。また、これを違った角度からとらえ直す論考、レゴとインテュイットの経営者インタビューを掲載する。

 元プロクター・アンド・ギャンブルCEOのアラン G. ラフリーと、元トロント大学ロットマンスクール・オブ・ビジネス学長のロジャー L. マーティンによる「顧客の『選択』を『習慣』に変える」では、自社の製品やサービスを、顧客がいつも本能的に快適さを感じて選択してしまうような、「累積的優位」の重要性について論じる。企業は顧客を逃がさないために、多くの時間と資金を費やして、いままで誰も見たことがないような商品、かつてないほど魅力的な商品で顧客を喜ばせようと努力している。ところが最近の行動研究の成果によれば、顧客の側は、企業の積極的な変革を好むのではなく、自分に馴染みがあって、簡単に買えるものを求めていることがわかってきた。となれば、企業が競争優位を持続させるためには、顧客に「選択」させるだけではなく、「習慣」をつくる必要性がある。

 コロンビア大学ビジネススクール教授のリタ・ギュンター・マグレイスによる「習慣的な購買は、永遠ではない」は、「顧客の『選択』を『習慣』に変える」を受けて、経営戦略を長年研究してきた気鋭の学者が、対論を提示する。まず、技術革新や新しいビジネスモデルが普及すると、習慣は急激に変化する、と指摘する。そのうえで、顧客の習慣を維持させようとすることと、市場へのアプローチを刷新する施策をバランスさせることを提案する。

 レゴ・グループ社長兼CEOのヨアン・ヴィー・クヌッドストープへのインタビュー「習慣は、いずれ価値になる」では、ユーザーから愛着を持ってもらうために、同社が実行する戦略について語られる。世界で多くの子どもたちが遊ぶ玩具、レゴ。子どもたちは意識してレゴを選んで遊んでいると、レゴ・グループのCEOは自負する。まず簡単なキットで楽しんでもらい、徐々にその遊びを習慣化し、何かをつくりたいという願望に目覚めてもらう。すると、それが生活の一部となるまでの価値を持ち、強力な競争優位になるという。

 インテュイット創業者兼会長のスコット・クックへのインタビュー「人々のルーチンの観察から商品が生まれる」では、習慣的な購買を促す同社の戦略が語られる。家計管理ソフトウェアと中小企業向け経理ソフトウェアを大ヒットさせたインテュイットの創業者は、成功のもとは観察にある、と言う。人々が義務を楽に果たそうとして行動を習慣化していることを、人々を観察することで気がつき、その行動をより効率的にできる製品を開発したのだ。しかし同社はいま、デジタル技術を使い、習慣を不要にすることで、人々をより楽にするシステムを開発している。

 早稲田大学理工学術院の渡邊克巳教授による「顧客の習慣を科学する」では、習慣的な購買行動を生むメカニズムが解き明かされる。ほとんどの人には、特別な理由がないにもかかわらず、習慣的に買い続けている商品やサービスがあるのではないか。それらはなぜ、選ばれ続けるのか。実際のところ、その真の理由は本人でもわからない。ましてや、企業がアンケートやインタビューを行うことで、それを把握するのはほぼ不可能である。しかし、顧客の行動原理を理解することで、自社の商品・サービスが選ばれ続けるヒントを得ることはできる。