企業の成長が踊り場に差し掛かった時に組織をどのように変革していくべきか?成熟期を迎えている多くの日本企業で現在注目されているのが、コーチングやファシリテーションを抱括し、組織を活性化させる「組織開発」のアプローチだ。その概念と具体的な手法を、組織開発を専門に研究する南山大学人文学部心理人間学科の中村和彦教授に聞いた。

南山大学人文学部心理人間学科
中村和彦 教授

専門は組織開発、人間関係トレーニング(ラボラトリー方式の体験学習)、グループ・ダイナミックス。組織開発実践者のトレーニングを通して様々な現場の支援に携わるとともに、実践と研究のリンクを目指したアクションリサーチに取り組む。著書に『入門 組織開発』(光文社)。

 組織開発とは、OD「Organization Development」の略で、直訳すると〝組織発達〟である。1960年代に米国から日本に導入され、当初は“組織づくり”と訳されたこともある。

 「組織開発の理論や手法は多種多様で、いわば“包括的な箱”のようなもの。人や関係性という組織内のソフトな面に光を当てて変革をめざすもので、ある特定の手法を指すわけではありません。それだけに全体像を直感的につかむのは難しい」

 そう説明するのは、組織開発の研究者である南山大学の中村和彦教授だ。その定義を一言でいえば、「職場や組織の人間的側面を良くしていくアプローチ」となる。

 なぜ今、日本企業にとって組織開発が必要だと言われているのか。

 「これまで日本企業のマネージャーの多くは短期的な成果を求めるだけで、職場内で協働できる関係性を育んで成果を上げる、という発想がありませんでした。今後は仕事の個業化がさらに進み、1人で仕事をするというスタイルが多くなります。調整は上司とだけ行う状態で、リモートワークが進展すれば、チームとして協働性はさらに目減りしていきます」

 協働性がなくなると、学びが共有されなくなりノウハウが属人化される。その結果、仕事は個人プレーが中心となって、チーム内の対話が消失し、発想が貧困になる。個人の能力には限界があり、そのような状況では独創的なイノベーションなど起こらなくなる。

 これまで日本企業は効率性という名の下で、組織の人間的側面の開発をないがしろにしてきた。それが現場レベルの発想を硬直化させ、ある種の閉塞感を生んでいる。「効果的な仕事をチームで行うためには、一見効率的とは思えない組織開発を行わないと最終的に効率性は上がってこないのです」と中村教授はパラドックスを指摘する。