2つ目に、マイクロソフトという時価総額世界第3位の企業が、現在どのような意図を持って、テクノロジー分野に投資をしているのか、その展望をCEO自らが語っている点にある。産業を変えると思われる3つの主要なテクノロジーを、マイクロソフトはリードしようとしている。その3つが複合現実(MR)、人工知能、そして量子コンピューターである。これらテクノロジーが、人の働き方や経済にどのような影響を与えるのか。そして、テクノロジーがもたらす変化を、どのように捉えているのか。その未来図が示されている。

 3つ目は、インド人CEOの文脈で名前が挙がることの多い、サティア・ナデラ氏その人のバックグラウンドに触れられる点ではないだろうか。近年、グーグルのサンダー・ピチャイ氏やペプシコのインドラ・ヌーイ氏など、インド出身の経営者が増えている。もちろん、彼一人の体験を読むことで、インド人CEOと一括りに語れるわけでもなく、インド人CEOという括り自体が、そもそも意味を持つものではないとも思う。しかし、米国出身ではない彼が、どのようにマイクロソフトへと辿り着いたのか、そのストーリー自体が面白いものであり、彼の基軸となっている「共感」についても知ることができる。

 マイクロソフトの変革が、今後どのように歩みを進めていくのか。どのような成果をおさめるのかは、まだわからない。しかし、数年後に今を振り返るのではなく、変革の渦中に立つ経営者のレンズを通して、マイクロソフトという企業、そしてテクノロジーの未来を見ることのできる本書は貴重だ。彼と同じように、現在変革に取り組むリーダーやテクノロジーの将来を考えるビジネスパーソンにとって、本書は新たな視座を与えてくれるだろう。