リーダーシップをめぐるこの考察には、2つの重要な意味がある。

 第1に、リーダーシップ教育を実施する際は、分野固有の専門知識が大事であることを、もっと明確に示す必要がある。ある種の会社の経営で成功した人が、異なるミッションを持った別の会社でも、同水準の成果を上げる可能性が高いとは限らない。

 第2に、これからリーダー職に就く人々を教育する際には、分野固有の問題を解決する訓練を施す必要がある。そうすれば、当人の専門分野の情報を適用する準備ができる。たとえば、従業員間の一般的な対立を解決する方法を教えるだけでは不十分だ。実際の事例に基づいたシナリオをいくつも設定し、特定の業界で対立が起きた場合に生じる、あらゆる不確実性に取り組ませるべきなのだ。

 転職や業界替えが多い現代の職場環境では、この問題は特に重要である。人材流動性の高さが意味するのは、若手社員の多くが、現在働いている業界で十分な専門知識を習得できないおそれがあるということだ。そうなると、彼らはリーダー職で成果を上げることが困難になる。

 企業は未来のリーダー候補を選定したら、リーダーとして必要な専門技能を身につけさせるために、自社への定着を促すべきだろう。


HBR.ORG原文:Can You Be a Great Leader Without Technical Expertise?  November 15, 2017.

■こちらの記事もおすすめします
部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される
「経験に根差した知識」を速やかに習得する法
優秀なベテラン社員が会社を去るとき、その知識と経験をいかに引き継ぐか
「技術に強い創業者」と「ビジネスに強い人材」、両者の協働がスタートアップの成功率を高める

 

アート・マークマン(Art Markman)
テキサス大学オースティン校のアナベル・イリオン・ウォーシャム生誕100周年記念講座教授。心理学とマーケティング論を担当。また、同校ヒューマン・ディメンションズ・オブ・オーガニゼーションズ教育プログラムの創設ディレクターでもある。論理的思考、意思決定、モチベーションなどをテーマに、150以上の学術論文を執筆。著書に『スマート・シンキング』、『スマート・チェンジ』、Habits of Leadership(未訳)などがある。