パメラ・ストーンとメグ・ラブジョイによる研究では、女性が仕事をやめる決断をするとき、3分の2のケースで夫が重要な要因であることがわかった。その多くは、妻がいわゆる「親業の不足」を埋めるからである。フェミニズム法学者のジョアン・ウィリアムズは、この研究について次のように書いている。「女性はほとんど異口同音に、夫は協力的だと答える一方で、仕事のスケジュールを変更したり、介護の手伝いを増やしたりすることを、夫がいかに拒否するかを語っている」。ある女性はこう言っていた。「彼はいつも『おまえは何でもしたいことをしていいんだよ』と言っていました。でも、家事は全然負担してくれないんです」

 夫のこうした反応に、女性はショックを受け、驚く。というのも、結婚生活のルールは明確で、きちんと教育を受けたカップルは、互いに協力して交代で家事をし、互いに可能性を追求するのを助け合うものだと、女性は信じてきたからだ。

 しかし、ハーバード・ビジネス・スクール卒業生に対するアンケート調査を見れば、ギャップは明らかだ。男性の過半数が「自分のキャリアを妻のキャリアより優先する」と期待している一方、女性は大部分が平等な結婚を期待していた(自分のキャリアを優先する女性は、ほとんどいなかった)。ミレニアル世代の男性は、もっと理解が進んでいるとよく言われるが、データを見るとそう単純でもない。アンケート調査の結果では、若い男性は上の世代の男性ほど男女平等を大切だと思っていないふしがある。

 男女平等を追求するカップルでも、共働きという危険水域をうまく乗り切るには、2人とも相当な人格者でなくてはならない。となると、抵抗の少ない道を選ぶほうがたやすい。男性は仕事重視、女性は家庭重視という、昔ながらの役割分担である。よくあるケースとして、男性のほうがいくつか年上で、キャリア面でも先行しており、当然給与も高いという場合は特にそうだ。ここから、崩しがたい悪循環にはまってしまう。男性は稼ぎを増やすチャンスを数多く得て、女性は追いつくのがますます難しくなるのだ。

 女性が抱く幻滅は深く、長い。そして、遅まきながらの反応を引き起こす。私が、1950年代と1960年代の離婚の増加と婚姻率に関する本を書くために、調査を進めるなかで気づいたのは、才能ある女性がじっと好機を待つことだ。自分の野心を抑えるよう、夫から無言の圧力を受けた女性は、タイミングを見計らう。そして子どもが巣立つともに、妻もいなくなることが少なくない。熟年離婚の約60%は女性が切り出す。その多くは、50代というキャリアの開花期に精力を集中したいためだ。

 今度は、夫がショックを受ける番だ。彼らは懸命に働き、家族を支えてきた。それが自分の役目だと信じ切っていたからだ。だがそれは、ジェンダー・バランスの取れた世紀に生きる、現代カップルが目指すところではない。

 ノースウェスタン大学のイーライ・フィンケルが著書The All-or-Nothing Marriage(未訳)で書いたように、共働きのカップルは、経済が不安定な現代において、ほとんど無敵だ。最高の結婚はかつてないほど幸福で、バランスよく、互いに満足感を与えられる。家庭内のジェンダー・バランスは、逆境にも強いカップルを生み出している。ただし、そのためには何十年にも及ぶ相互のサポートとバランスが必要だ。パートナーの夢を無視するなら、それなりの覚悟が必要である。

「知らなかった」。妻に去られた男性の多くがそう口にするのを、私は何度となく聞いた。これは、女性幹部が退職した際、企業のトップ層が言うセリフとそっくりだ。女性幹部が退職するとは、彼らは予想もしていなかった。周りの態度や正当に評価されないこと、能力面で劣る男性社員が先に昇進していくことなどに、彼女たちがどれほど不満を募らせていたかを理解していなかったのだ。

 だが実際には、突き詰めてみれば、男性たちが知らなかったはずはない。気にしなかっただけなのだ。

 彼らは耳を貸そうとしなかった。そんな必要があるとは思っていなかったからだ。生返事をして、話を聞き流してきた。大事なことではないし、自分に直接の影響はないと思っていたからだ。何人かの男性は、妻のフラストレーションは更年期障害の一種で、しばらくやり過ごせばいいと思っていたと語った。この種の見くびり、軽視こそが女性の心を乱し、ついには彼女たちをドアの外へと踏み出させる。そして、夫は非常に驚き、悲しむはめになる。

 リーダーシップやチームビルディングについて職場で学ぶことは、そのまま家庭でのバランス管理にも応用できる。以下は、私が近く出版予定の本で説明した方策の一部である。