機能同士がつながるネットワーク型で構想・設計すべき

 こうした大きなビジネスの変化に対して、サプライチェーン改革の視点・テーマはどのようなものにシフトするべきか。アクセンチュア・ストラテジーでは「デジタルサプライネットワーク」というコンセプトを提唱している。(図5)このコンセプトが伝えることは、線形に構想・設計されることがサプライチェーンの常識であったが、今日では機能同士が自在につながるネットワーク型で構想・設計されるということである。

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出所:アクセンチュア

 これまでサプライチェーンとは文字通り、開発・品質・需給・調達・製造・物流・販売 といった供給に関する機能が上流から下流に線形に配置された「鎖」であり、前の機能から後ろの機能(あるいはその逆)に情報とモノが受け渡されていく。したがっていかにサプライチェーン上に配置された機能をまたぐ際に情報ギャップとコストを発生させないようなカイゼン手法を磨き、end to endでコストリーンな「鎖」を形成できるかを考えてきた。

 しかし前述したようなA:「コト」の供給をB:短サイクルで実現していくためには、サプライチェーンの「鎖」のイメージを捨て、供給に関する機能に順番はなく直接つなげたり切り離したり(プラグイン・アウト)できる「ネットワーク性能」を磨くべきだ。そしてプラグイン・アウトをできるためには、よほどクリティカルな競争力の源泉となっている機能(Amazonにおける自社倉庫のような)以外は、投資の重いアセットはなるべく持たずに外製化しているほうが望ましい。

 外製化はまた多くの企業にとって、先進的な技術を持っているプレーヤーの生態系に常にアンテナを張るという狙いもある。そうして人間がやるべき仕事と機械やロボットにやらせる仕事の区分けを、技術の進化と人・社会の許容度とのバランスのなかで変えながら、供給に関する「ネットワーク」のデザインを変化させ続けていくことを「デジタルサプライネットワーク」は提唱している。

 考えてみれば、今日の先進的企業が取り入れている数々の手法は、すでに線形に並んだ機能を前提にせず、機能同士をデータで直接つないでサプライチェーンのパフォーマンスを向上させるものである。たとえば「製造ラインのテスト工程から開発機能にリアルタイムで品質フィードバックがかかる」「顧客の製品使用状況データから製造や調達がリアルタイム補充に向けて動き出す」「需給のひっ迫状況を予測しながら販売現場への品揃えレコメンドを切り替える」など。

 しかし、こうした手法が個別に現れていることをもって「サプライチェーンがネットワーク型になりつつある」と説くのは表面上の変化をキャッチーな言葉で包装しているだけに思える。本質としてはA:「コト」の供給をB:短サイクルで実現していくために、プラグイン・アウトしながら多様な供給パターンを可能にするという意味でサプライチェーンの「ネットワーク性能」を追求することが「デジタルサプライネットワーク」が意味するところである。

太田 陽介(おおた・ようすけ)
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
サプライチェーン&オペレーションズグループ日本統括 マネジング・ディレクター
慶應義塾大学卒業後、2000年アクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業・ハイテクなど複数産業、また国内外でのサプライチェーン企画・設計を多数歴任。サプライチェーン以外にも生産、調達、R&DなどCOOのアジェンダを広くカバーする経験を有し、ビジネスモデル変革からそれに応じた機能設計までを一貫整合して実施するスタイルで定評を得ている。

※後編(2)に続く http://www.dhbr.net/articles/-/5138