第1の研究の被験者は、ウェストポイントの米国陸軍士官学校の学生たちだった。学生たちは毎年、チームを組んで4ヵ月ほどのトレーニングを受けたあと、2日間の戦争ゲームに臨む。

 筆者らはトレーニング期間中、学生に数回のアンケートを送った。最初のアンケートは、トレーニングが始まってから数週間後に行った。年齢や性別などの基本的なデモグラフィックデータに加え、自分がグループ内でどの程度アイデアを発言したり、問題を指摘したりするかについて答えてもらった。また、戦争ゲームが始まる10日ほど前に送った2つ目のアンケートでは、チームメンバーの各人について、チーム内でどの程度ステータスを獲得しているかを評価してもらった。

 我々はこの情報を用いて、一人ひとりの「ステータス・スコア」を算出した。ゲーム終了直後に送った最後のアンケートでは、再度ゲームをするとしたら誰にチームのリーダーになってほしいか、チームメートをランク付けしてもらった。そして、そのデータを使って各個人の「リーダー出現スコア」を算出した。

 第2の研究では、クラウドソーシングのアマゾン・メカニカル・タークで、グループダイナミックス(集団力学)に関する学術研究の被験者をオンラインで募集し、「マスターワーカー」を196名選定した。被験者の平均年齢は39歳、就業経験年数の平均は15.6年、全体の38%が女性だった。

 被験者には、自分自身の基本データに関する質問に答えた後、短い文章を読んでもらった。保険プランを電話で販売するグループで働いているが、保険プラン販売のために採用しているプロセスが、効果的ではなかった。そうしたなか、上司も参加するミーティングで、効果のないプロセスについて同僚の一人が発言しようと決めた。そんな状況を想像してもらった。

 発言の録音を4種類用意し、被験者をランダムに振り分けて、4つの発言のいずれか1つを聞かせた。(1)男性がプロセス改善のアイデアを提案する、(2)女性がプロセス改善のアイデアを提案する、(3)男性がプロセスの問題点を指摘する、(4)女性がプロセスの問題点を指摘する、の4パターンである。続いて、発言者がグループ内でどれくらい高いステータスにあるかを評価してもらった。また、発言者がグループに対してどの程度影響力を発揮したと思うかを、いくつかの質問を通して答えてもらった(リーダーシップの出現を評価するために広く用いられている方法である)。

 実地調査と実験的研究の手法の両方を用いて、デモグラフィックスが大きく異なる被験者を対象とした、これら2つの研究を通じて、結果に同じパターンが見受けられた。

 男性がアイデアを発言した場合、より高いステータスを持つと見なされ、リーダーになる可能性も高かった。一方、女性の場合は、発言しても(前向きか禁止的かにかかわらず)ステータスにもリーダーになる可能性にもメリットはなかった。問題を指摘する発言をした場合、男性も女性も、ステータスを損ねたり、リーダーになる可能性が低くなったりすることはなかった(ただし、そうした発言はメリットももたらさなかった)。もう1つ注目すべきことは、男女ともに、前向きな発言をした女性よりも、前向きな発言をした男性のほうが、よりステータスが高くリーダーになる可能性が高いと評価したことである。

 筆者らが得た知見は、いくつかの研究分野の知見を補強する。その一方で、次のような疑問も提起する。自分のグループをよりよくするためには、どのような行動が最も望ましいのか。そして、グループ内でみずからのステータスを高めるには、どのような行動が最も望ましいのか。