●企業にできることは何か

 女性のリーダーシップ・スキルを高めるプログラムは大切だが、企業は、より根本的(かつ困難)な問題である、バイアスを減らすという課題にも目を向ける必要がある。そのためには、バイアスを減らすプログラムに加えて、機会を均等に与える方針を明確に打ち出すことも肝要だ。

 その方法の1つは、昇進と雇用の平等性を高めることである。ある重要な研究によれば、候補者を複数リストアップするようにすれば、企業がよりよい判断を下すうえで役に立つ。ハーバード・ケネディ・スクールのアイリス・ボーネットの研究によると、複数の候補者をグループ単位で見ると、候補者同士のパフォーマンスを比較しやすくなった。それに対して、候補者各人を個別に捉えると、ジェンダーに関するバイアスが入り込みやすかった。その結果、雇用判断の質が下がってしまい、不平等な人選が多くなった(たとえば、膨大な量の数字を扱う定量的な職務で男性を多く採用するなど)。

 仕事の負荷も問題の原因になり得る。階層が上がるほど仕事量も増していく。この問題そのものはジェンダーに直接関係ないが、女性はある年代に達すると、さまざまな社会的圧力によって、仕事と家庭および著しく不均衡な家事負担のはざまで、同時にバランスを取る必要に迫られる。企業は、仕事量に関する期待を見直し、仕事を持つ両親をより手厚くサポートする方法を考えたほうがよいだろう。そうすれば、女性に「家庭か仕事か」という選択を強いることがなくなる。

 企業は、ジェンダーの不平等に対しても、ビジネスの他の問題と同じ方法で取り組む必要がある。すなわち、確かなデータに基づく方法である。ジェンダーの不平等と闘うプログラムのほとんどは、裏付けに乏しい情報や表面的な調査に基づいている。しかし、特定の企業の具体的問題を解決するには、「女性がドロップアウトするのはどのタイミングか」「女性は職場で男性と異なる行動を取っているのか」「自社の文化に、女性の成長を妨げている要素はないか」といった基本的疑問への解を得るためのデータが必要になる。

 組織が解決策を講ずるときは、行動と昇進の両面で実際の結果を測定できなければならない。そうしてこそ初めて、ジェンダーの不平等の原因に関する議論(バイアスか行動か)から脱して、必要な解決策を講じる段階へと推し進めることができるのである。


HBR.ORG原文 A Study Used Sensors to Show That Men and Women Are Treated Differently at Work, October 23, 2017 Updated October 26, 2017.

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スティーブン・ターバン(Stephen Turban)
ハーバード・カレッジ卒業。ヒューマナイズでデータサイエンティストとして働き、ハーバード・ビジネス・スクールではリサーチ助手を務めた。Your Relationship GPA(未訳)の共著者。

ローラ・フリーマン(Laura Freeman)
ピープルアナリティクスと職場分析を専門とするデータアナリスト。ハーバード大学で心理学の学士を持ち、MITメディアラボに勤務した後、ヒューマナイズのアナリティクスチームに加わった。現在は、クルーズ・オートメーションにて採用アナリストも担当。

ベン・ウェイバー(Ben Waber) 
博士。ピープルアナリティクス分野をけん引するヒューマナイズのCEOで共同設立者。MITメディアラボの客員研究員も務める。著書『職場の人間科学』は世界的なベストセラーになっている。