●行動が同じにもかかわらず、なぜ昇進の実態は異なるのか

 筆者らの分析によれば、同社で男性と女性の昇進割合が異なる原因は、行動ではなく、性別による扱われ方の違いにある。したがって、女性の行動を変えようという主張、たとえば「リーン・イン(一歩踏み出す)」などは、大局を見失う恐れがある。ジェンダーの不平等は行動の違いに基づくものではなく、バイアスによるものだからだ。

 我々の定義では、2つのグループの人々がまったく同じ行動を取っているのに、異なる扱われ方をしたときにバイアスは生じる。我々のデータが示唆するのは、ジェンダー間の違いが生じる原因が、女性の行動自体ではなく、人々がそれをどのように「捉えている」かにあるということだ。

 たとえば、女性メンターシップ・プログラムの目的は、潜在能力の高い女性が経営幹部と接する機会を増やすことだ。だが、女性が男性と同等の頻度で経営幹部と話しているのなら、問題は接する機会の多寡ではない。そこでの会話が、どのように捉えられているかが問題なのだ。

 バイアスは、職場での行動の捉え方だけでなく、職場以外でどのような行動が期待されているかにも関わっている。同社では、女性はキャリアの半ば、勤続4年から10年ほどで退社する場合が少なくない。このタイミングから、もう1つ別の仮説が浮上してくる。女性は、子育てなど別の理由で退職を選ぶのではないか、という仮説だ。筆者らのデータから、この仮説の真偽を判断することはできないが、だからといってバイアスを減らすべきだとする主張が変わるわけではない。

 男性と女性が家庭内で対等の立場にあるなら、退職する割合も同じになるはずだ。しかし、実際はそうなっていない。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーとリーンイン・ドット・オーグが発表した2017年ジェンダー・レポートによれば、パートナーを持つ女性は、すべてまたはほとんどの家事を引き受けることになる可能性が、男性パートナーと比べ5.5倍も高い。しかし、女性は昇進できず、男性は昇進している。数年前の研究によれば、子どもができると男性は責任感が強くなると見られているのに対し、女性は仕事に対する真剣さが低下すると思われている。