アップルもイーグルス同様、「比類なき偉大さ」に対する期待を消費者の心に植えつけようとしている。アップルのCEOトム・クックは、iPhone X発表の場で、「最初のiPhone以来、最大の進化を成し遂げた」と言い放った

 こうした大胆な表明は結構なことだが、消費者は調子のいい売り文句をさんざん耳にし、しばしば失望させられてきた。その結果、我々は、こうした言葉をシニカルに受け取りがちだ。価格を高めに設定することは、あなたの目を見て誓いますと言っているようなものだ。「たしかに高い。しかし、信じてください。それだけの価値があるのです」

 ただし、アップルは自社製品への自信を心理的に、さらに強く伝えるチャンスは逃したと思う。具体的には、iPhone Xで「9で終わる価格」を避けるべきだった。消費者は、9で終わる価格を、次の数字、つまりゼロで終わる数字よりも大幅に安いと感じることが多い(1ドルより99セント、100ドルより99ドル、1000ドルより999ドルといった具合だ)。クックの主張通り、iPhone Xが革命的な製品だとしたら、自信を持って「9で終わるゲームはしません。価格は1000ドルです」と言えたはずなのだ。

 価格設定は、需要と供給のバランスを取る戦略だけに留まらない。そこには、さまざまなニュアンスがある。そしてイーグルスの場合と同様に、アップルの価格設定戦略は、いまのところうまくいっているようだ。メディアは、iPhone Xの価格が高いことを大きく取り上げている。アップルのアナリストとして知られるジーン・マンスターは、アップルの顧客のうち30~40%は、最新iPhoneに999ドルを出すだろうと予測している。

 さて、大きな期待に見合ったレビューがメディアと顧客から得られるかどうか。そして、アップルがロックスターのようなステータスを保てるかどうか。お手並み拝見といこう。


HBR.ORG原文:The Psychology Behind the New iPhone’s Four-Digit Price, September 21, 2017.

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ラフィ・モハメド(Rafi Mohammed)
価格戦略コンサルタント。著書に The 1% Windfall(未訳)がある。ツイッター@cultureofprofitでも発信している。