テクノロジーの影響を
変化と多様性に転化する

ソニー株式会社
取締役 代表執行役 副社長
兼 CFO
吉田憲一郎氏

 プログラムの最後は、ソニー取締役代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏による対談。吉田氏は2014年にCFOに就任後、平井一夫社長と二人三脚で構造改革を断行し、18年3月期は20年ぶりに営業最高益の更新も視野に入れる。

 とはいえ、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。デジタル化の進展は、ソニーの既存の事業に大きな影響を与えているからだ。ソニーは20世紀のパッケージメディアの主役だったが、映像ストリーミングサービスが登場して、オンデマンドでいつでも見られるようになり、「タイムシフトの時間価値がコモディティ化した。これがデジタル化の大きなインパクトの一つだ」、と吉田氏は指摘する。

 パッケージメディア同様、映画館での上映も課題が見えてきた。中国などの新興国を除いては、市場は伸び悩んでいる。ストリーミングサービスであれば月額10ドル程度だが、ロサンゼルスの映画館だと18ドルの入場料のほかに、ポップコーンや飲み物を買えば30ドルはかかる。消費者は膨大な時間をソーシャルメディアやEコマースに費やしており、30ドル払って劇場で映画を観る行為は、ある意味でお金と時間に対する投資になってしまったのだ。

 一方で、今後、自動運転が普及したら、自動車保険を扱うソニー損保のビジネスモデルも変革を迫られるかもしれない。「ソニーの事業ポートフォリオの中にテクノロジーの影響を受けないものはない」のである。だからこそ、新たなテクノロジーを積極的に取り込んでおり、「音楽著作権管理の領域におけるブロックチェーン活用の可能性も議論している」という。

 過去10年で急速に普及したアップルの携帯端末や、市場拡大が進むアマゾンのAIスピーカーなどは、かつてソニーが得意とした市場だったはず。「これに対し、どのような対抗手段を打つのか」というモデレーターの問いかけに対して、吉田氏は「AV(音楽・映像)のソニーとして、撮る・見せる・聴かせることにこだわる」と回答。最近では、「時間解像度」をキーワードに、製品開発を進めているという。それによって、ハイレゾリューション音源は1分間のサンプリング数を上げ、映像なら1秒当たりのフレームレートを上げる。スマホでスーパースロー映像を撮影できるのは、現在のところソニーモバイルの製品だけだ。

 「今後、チャレンジしていく分野は何か」という問いに、吉田氏は「画像認識と運動系」を挙げた。「自動運転に欠かせないのは画像認識。加えて、車は運動系なので我々が持つメカトロニクス技術で貢献できる」とし、画像認識の例として、トンネル出口など明暗差が大きい場所でも鮮明な画像を写し出すハイダイナミックレンジ機能を搭載した車載用カメラの画像センサーを紹介した。

 世界で最も知られた日本のブランドであるソニーが、いよいよ本格的な復活を遂げようとしている。そこで、最後の問いは「この先、いかにしてソニーらしさを追求していくのか」。

 これについて吉田氏は、「人種や国籍、事業ポートフォリオなど多様性を内在しているのが、ソニーの強み」と語った。吉田氏自身も、一旦はソニーを離れて子会社に移り、その子会社のトップとして株式を上場させた後、再びソニーに戻って構造改革を担うなど、多様なキャリアの持ち主だ。

 デジタル化のインパクトを冷静に見据え、多様性という強みを生かして、革新的な製品や事業の開発にチャレンジしていく。ソニーにとってデジタル化はリスクであるとともに、さらなる変化と多様性を生み出す原動力ともなっているようだ。

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