若い人を生かす制度設計や
投資を行うのがCFOの役割

株式会社資生堂
執行役員 最高財務責任者CFO
直川紀夫氏

 プログラム後半では、引き続き松尾氏が登場し、資生堂執行役員最高財務責任者CFOの直川紀夫氏と対談した。「デジタル化の進展に伴い、顧客の志向が大きく変わった。若い世代はデジタルが当たり前。雑誌は買わないで、デジタルで読む。これから3年でさらに大きく変わるだろう。CFOはもっとデジタルやAIに興味を持つべきではないか」と直川氏は問題提起した。デジタル化の奔流によって時代は確実に変化している。企業経営において、CFOは最終的な投資判断を下しているが、そこには若い世代の意見はあまり取り入れられていないのが現状だ。その要因として、若い世代の能力が十分に生かされていないこと、そして言葉の問題が挙げられると、直川氏は言う。「2年前から資生堂グループでも、地域を縦軸に、機能を横軸にしたマトリクス型組織によるグローバル経営を行っている。その結果、海外拠点からディープラーニングなど最新のテクノロジーを早く導入すべきといった提案がなされる機会が増えた。なぜなら日本にいるよりも、米国や中国にいるほうが、AIベンチャーに関する情報や投資案件に接する機会が多いからだ。そこでは、やはり言語のハードルも大きい」と打ち明ける。

 デジタルで変革を遂げるには、ベンチャー投資も有力な選択肢の一つだ。しかし、日本企業は海外のベンチャーに対する投資意欲は総じて高くない。「ベンチャー企業は将来価値を評価することが難しいため、多くの企業が二の足を踏んでしまうことも要因の一つではないか」と直川氏は指摘する。

 一方、オープンイノベーションによって外部の知見を取り込むことも、日本企業にとって重要な課題だ。「ディープラーニングについて、最先端の研究ができているのはグーグルやフェイスブックなど巨額の資金を投じられる企業だけ。ほかはそれを真似するだけなのが実態だが、しっかり真似しているのは、テンセントなどの中国企業や韓国企業。日本企業は、独自のものをやりたがる」と松尾氏。これに対し、直川氏は、「日本は外からいろいろなものを持ってきて、それを融合して新しいものをつくるのが得意だったはず。ディープラーニングも外から取り入れて、ポジティブなフィードバックを回していくことが大切だ」と話す。

 「変革のためには、まずは一歩踏み出すことが重要」としたコマツの野路氏の指摘に直川氏は深い同意を示し、「1割、2割の可能性でも飛び込んでいく覚悟がないと、今の時代は遅れるばかり」と危機感をあらわにした。

 さらに直川氏は、画像認識を得意とするディープラーニングを活用すれば、例えば女性がSNSでフォローしている画像を収集・分析することで、パーソナライズされた美しさや、なりたい自分を実現する、化粧品以外も含めたソリューションの提供にもつながるという構想を語りつつ、「重要なのは社内でチャレンジするカルチャーをどうつくるか。若い人を生かす制度設計や投資をいかに行うのかが、ここに参集しているCFOの役割ではないか。もっとチャレンジングな投資ができれば、日本企業も変わるはず」と結んだ。