遠隔医療をさらに一歩進めるAIの活用

――2016年もスマホを活用した新プロジェクトを発表しましたが、ICT医療の今後の展望について伺います。

 2015年は、医療関係者にスマホを配りましたが、2016年は、その次の段階として、患者向けにアプリを提供しました。さまざまな企業と共同開発した「MyHOSPITAL」は、おもてなしをコンセプトに掲げ、来院患者の負担軽減を図るアプリで、診察券の電子化、オンライン決済、処方箋の電子化、お知らせ通知などの機能を搭載しました。

 診察券をデジタル化し、スマホに入れられるようにすれば、カードを忘れたり、紛失してしまったりということが防げます。オンライン決済は、「MyHOSPITAL」とクレジットカードを連携させることで、病院の会計をスマホで済ますことのできるシステムです。診察後の会計時の待ち時間を短縮することが可能です。処方箋の電子化は、自宅近所の薬局に電子化した処方箋をあらかじめ送り、移動時間を自由に使えるようにするものです。

 今後、注目しているのはPHR(パーソナルヘルスレコード)とAI活用です。PHRとは、個人が自分自身の医療情報や健康情報をクラウドなどに記録し、必要な時に本人が確認・活用できることを目的とした情報管理の仕組みです。私たちは、特にPHRをスマホで行うことの研究を進めています。PHRについては、国も大きな構想をもって推進していますが、私がアルムと共同開発した救命・緊急補助アプリ「MySOS」(一般人対象)にPHRを組み込んで、「Join」(医療従事者対象)などと連携させることで、医療機関と身近に連携することにより、PHRの活用が可能になり、医療の質の向上や医療の均てん化につながるのではないかと考えています。

 AIは、遠隔医療をさらに一歩進めるシステムの開発に活用されています。脳卒中患者を緊急搬送する際に患者の状態や搬送先をAIが診断するもので、「Join」と組み合わせた実証研究の準備が、全国15の大学病院とともに進められています。

 2018年にはそれらの医療機関との連携を強化し、2019年には国民一人ひとりがICT医療を受けられる環境を整備し、2020年には日本のどこの病院に行っても、同じ医療が受けられるような世界を実現したい。そのためには、3つの課題を解決していく必要がありますし、国や企業との連携も深めていきたいと考えています。

(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)