●安心できる環境をつくる

 みずからの振る舞いを見直して、部下が悪い知らせを安心して伝えられるようにしよう。

 私がマイクロソフトで働いていたとき、ビル・ゲイツと打ち合わせする際は、問題を詳細に議論することが多かった。ゲイツはその著書『思考スピードの経営』の中で、CEOの最も重要な仕事の1つは、悪い知らせに耳を傾け、対策を講じられるようにすることだったと書いている。潜在的な問題について、ゲイツや社内の他の人々と話し合うことで、問題を新たな角度から見ることもできた。

 一方、ジェームズは、問題を指摘することを主体的取り組みの欠如と見なした。そのことをコーチング・セッションで話し合ったところ、ジェームズは、自分によい知らせしか伝えないような(さらに残念なことに、悪い知らせを隠すような)文化を生み出していたのが、自分の言動だったことを理解し始めた。そこでジェームズはいま、ひと呼吸おいて懸念材料を別の言葉に置き換え、問題について質問するよう努めている。そうすることで、他の経営幹部が少し前から知っていながら伝えられずにいた問題が、ジェームズの耳にも入るようになってきている。

●グチではなく、問題の説明を求める

 部下たちから潜在的な問題を知らせてほしいものの、それがもっともな懸念なのか、単なる不平不満なのかは区別しなければならない。

 グチでは「いつもそうだ」や「絶対にしない」といった断定的な表現が使われ、具体的な裏付けに乏しい。責任を取ろうという姿勢はなく、悪玉(彼ら)と善玉(自分たち)が登場しがちだ。また、問題の表面しか見ていない場合も多い。たとえば、「青チームはまったく期限を守れない。だからいつも、こちらが貧乏クジを引くはめになる」はグチである。断定表現を用い、悪玉が登場し、話し手には責任が一切ない。

 それに対して、「問題の説明」とは、客観的事実を提示し、背景にある要因と原因を検証し、説明する本人も含めて、誰がどのように問題を生んでいるかを解明する。前述の例を用いるなら、「問題の説明」は次のようになる。「青チームは、過去6ヵ月間で4回納期を守れず、遅れは平均で6.5日だった。そのうち2回は、私たちのチームも期限を守れない状態だったが、残りの2回は、このプロジェクトの担当部分を期限内に終えた。青チームの遅れが納期に影響を及ぼさないよう、私たちのチームは休日出勤して間に合わせた」

 このように「問題の説明」をすれば、繰り返し起こる遅延のパターンをはるかに特定しやすくなる。説明する本人も問題の一因だったことを認めているので、他者を非難するのではなく、問題の解決に前向きであることがわかる。そのため、根本的な原因を見極めるために、全員が問題を掘り下げることが可能になる。青チームはリソースが足りないのかもしれないし、期限までに作業を終えるのに必要な情報を受け取っていなかったのかもしれない。そもそも、プロジェクトのスケジュールの組み方が、予期せぬ出来事が起こる可能性を考慮していなかったのかもしれない。

●問題を解決できる人材を見つける

 部下が問題を持ってきたら、その重要度を考慮し、指摘した本人に問題解決の能力があるかどうかを検討しよう。その部下が1人で取り組めるのなら、あなたは承認を与えるだけで部下は先へ進むことができる。一方、状況を理解する方法や、考えうる解決策の範囲を広げる方法について、あなたのコーチングが必要な場合もあるだろう。

 問題が大きすぎて、指摘した社員では解決できない場合は、ほかに適任者がいるかもしれないし、複数の部署で協力し合う必要があるかもしれない。問題が非常に重要または顕著な場合は、あなた自身が監督する必要があるかもしれない。状況に応じて、社員が能力を伸ばし問題に取り組めるようコーチングしたり、問題を指摘してくれたことに感謝し、適任者に問題の解決を任せたり、いくつものグループをまとめて問題に取り組んでもらったり、といったことが考えられる。

 いついかなるときも、あなたの部下は何かしらの問題に直面する。早い段階で、頻繁に、そして建設的な方法で問題を指摘するよう促せば、社員の恐怖感を軽減し、能力を高め、問題解決のペースを上げることができる。

 ハーバード・ビジネス・スクールのフランシス・フライ教授はこう言っている。「問題を見つけるのは1人でもできるが、1人で解決できる問題はほとんどない」


HBR.ORG原文 The Problem with Saying “Don’t Bring Me Problems, Bring Me Solutions”, September 01, 2017.

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――ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長CEO・森下一喜

 

サビーナ・ナワズ(Sabina Nawaz)
CEOおよびエグゼクティブへのコーチ、リーダーシップに関する基調講演者、ライター。26ヵ国以上で活躍し、フォーチュン500企業、政府機関、非営利団体、学術機関の最高幹部にアドバイスを提供している。TEDxを含む国際会議やセミナー、イベントなどでの講演数は数百回に上る。HBR.orgに加えて、FastCompany.com、Inc.com、Forbes.comにも寄稿している。ツイッター(@sabinanawaz)でも発信している。