●自分のスキルを正当に評価する

 今後の先例となるような大きな変化に直面すると、リーダーは身がすくむほど自信が揺らぐ。

 私のクライアントの1人に、サプライチェーン担当のベテラン幹部がいる。彼は会社の生産フットプリントを改善する一貫として、工場閉鎖を発表する必要があったが、工場側がどう反応するかを考えるうちにパニック状態になり、数週間もの間、発表できずにいた。

 彼の不安の中心にあったのは、「この決定を説明するのにふさわしい信用性が、自分にはない。数十年にわたって、互いに誠実に付き合ってきた同僚たちから恨みを買うことに、耐えるスキルもない」という強迫観念だった。だが実際は、まさにこの長年の誠実な付き合いこそが、決定を発表するのにふさわしい信用性を支えているのであり、また彼ならではの行き届いた計画立案をもってすれば、最終的にはネガティブな反応を最小限に抑えられる見通しもついていた。変化を不安視するあまり、自分自身の強みを客観的に見る能力が鈍っていたのだ。

 レジリエンスのあるリーダーたちは、自分のスキルと経験を武器にして、目の前の困難に立ち向かう準備がどこまでできているか、また合理的に欠けていると考えられるところはどこかを、正当に評価する。自分に欠けている部分は他者のスキルで補強し、できる限りの準備をする。何より重要なのは、自分の不足部分を率直に認めて、至らなさを隠そうとしていると見られないよう心がけることだ。

●八つ当たりはできるだけしない 

 激しい変化の渦中で猛烈なストレスにさらされたり、厳しい市場の逆風に直面したりすれば、リーダーの堪忍袋の緒も切れやすくなる。自分がどんな影響にさらされているかを自覚していないリーダーは、たまたま目の前にいる人に、自分のストレスをぶつけがちだ。事務アシスタントや状況を知らない家族、あるいは役に立とうとしている直属の部下が、的外れなフラストレーションのはけ口になることが、よくある。

 大きな変化が起こっているときとは、規制上の要件変更や市場の減速といった、誰にもコントロールできない状況がイライラの元になりやすい。逆境に直面して短気になる傾向を抑えられないリーダーは、組織からレジリエンスを奪ってしまう。

 自分を知り抜いているリーダーは、他人を傷つけるような見当違いの反応を食い止めることができる。代わりに、自分でコントロールできることに注力する。

●非現実的な期待を順送りにせず、押し戻す

 大きな変化がよくもたらす残念な副作用の1つは、非現実的な目標設定だ。

 たいていの場合、そのような期待は上層部から下りてくる。自分をよく知らないリーダーは、こうした非現実的な期待を、そのまま部下に順送りにする。そこに、自分の被害者意識からくる怒りもにじませる。私はこれまで、多くのリーダーが変革を発表する際、次のように言うのを目にしてきた。「不公平だと承知していますし、失敗するよう仕組まれているようにも感じますが、受け入れざるをえない目標をこれからお伝えします」。これでは、変化に着手する前に組織にあったかもしれないレジリエンスが、きれいになくなってしまうだろう。

 自己認識に優れたリーダーは、相手が上司でも顧客でも、誰であろうと、無理な期待を押し戻すことを恐れず、また目標やスケジュールが道理にかなっていない場合は、恐れずに再交渉する。なぜ期待が非現実的であるのか、調整しなければどのようなリスクが課されることになるかについて、明白な論拠と、証拠になるデーターを使って、論理的に自分の言い分を述べた後、組織が成功するチャンスが高まる現実的な代替案を提示する。それはもちろん、こうした非現実的な期待を抱いた経営上層部が、大きな挫折に直面する前にその見通しを修正できるようにするためだ。

 いままさに臨もうとしている変化や挑戦は、実際に乗り越えられそうだという自信が持てるとき、リーダー自身と、そのチームのレジリエンスは強くなる。

●アンビバレンスに陥ったときは、原点に立ち返る

 長引く逆境や断続的な変化は、最も粘り強いリーダーからも、やる気を奪いがちだ。

 多くのリーダーは無意識のうちに、機械的に対処するだけの「自動操縦」モードに陥る。その結果、逆境を克服したり、変化をくぐり抜けて成功を手に入れたりすることについて、複雑な感情を抱くようになる。そのアンビバレンスが周囲から希望を奪い、努力を断念させることになる。これが問題なのだ。

 私のクライアントの1人は辞表を出す寸前だった。彼女は大手製薬会社のR&D部長で、急激に加速する製品開発サイクルに直面していた。彼女の面前には、治療分野のリーダーたちの縄張り意識が強いことで知られる、企業文化が立ちはだかっていた。そして、部門間の競争から成功の共有意識へと軸足を移した文化を構築しようと2年間奮闘したあげく、彼女はまさに断念しようとしていた。

 だが、「患者の人生を変えられるような優れた医薬品を届けたい」という深い情熱によって、彼女は改革疲れを克服した。また、この情熱が元気を奮い起こすビジョンになり、度量の狭いリーダーたちに、「私が勝つために、あなたには負けてもらう」というメンタリティーを押しのけさせる結果につながった。

 自分自身のやる気が弱まっていることを自覚しているリーダーは、いま一度原点に立ち戻り、前に進むための努力を倍増させ、さらには周囲の人を鼓舞して同じことをする気にさせる。

組織生活における逆境は、ときには大きな変化の結果であり、またときにはその誘因だが、いずれにせよ現代の生活様式の1つだ。この新しい標準に耐えるために、リーダーはより高いレベルのレジリエンスを常に蓄えておく必要がある。

自分をよく知るリーダーは、自分にどのようなスキルがあって何が欠けているか、自分がどのようなフラストレーションを抱えているか、そして、自分にとって核となる原則は何かを明確に把握している。そのようなリーダーは、逆境と変化をくぐり抜けるのに必要なレジリエンスの蓄えを維持して、成功する可能性が高い。


HBR.ORG原文 The Better You Know Yourself, the More Resilient You’ll Be, September 04, 2017.

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ロン・カルッチ(Ron Carucci)
米コンサルティング会社ナバレントの共同創設者、マネージングパートナー。組織やリーダー、業界の変革を目指す企業のCEOと幹部を支援する。ベストセラー作家でもあり、著書に最新刊Rising to Power(未訳)など8冊がある。ツイッター(@RonCarucci)でも発信している。Leading Transformationから彼の電子書籍を無料でダウンロードできる。