●前向きな気持ちになるまで待たない 

 インスピレーションを感じないときには、たいてい行き詰まりを感じているものだ。だからといって、何もしないのが一番いけない。デスクでメールの返信を書いているだけで、インスピレーションが起こるはずもない。変わろうともせずに、ひらめきが訪れるまで待つことはやめよう。

 認知行動療法の分野では、行動が、考え方や感じ方に影響を及ぼすことが明らかになっている。行動を変えれば、気持ちも変わるのだ。

 待つだけで行動を起こさなければ、停滞は助長される。あなたが行動を起こしさえすれば、新たな可能性が開かれ、まだ気づいていない感情が現れることを理解してほしい。そして、ふだん思っている以上に、仕事の環境はコントロールできるものだということを覚えておくといいだろう。

 ●インスピレーション・ルーティンを開拓する

 担当分野で秀でた実績を上げた後、学習モードから抜け出すのは自然な流れだ。だが、複数の研究結果によれば、「エキスパートである」と自認する人ほど、視野が狭くなるという。学問上の概念で言い換えれば、「習得的独断主義」に陥りやすくなるのだ。新鮮な経験や情報がきっかけとなってひらめきを得るときにこそ、インスピレーションわき、その状態を維持できるものだ。

 そのきっかけを集める手段は、数多くある。クラスの受講、読書、専門家の集まりへの出席、旅行などは一例だ。最も望ましいのは、自分に適した方法を1つ選び、その活動をルーティンとしてスケジュールに組み込むことだ。その結果、「半年に1度旅行する」と誓ったり、毎週金曜日の朝、数時間を記事や本を読む時間に当てたり、あるいは「四半期ごとに、担当分野でまだ会ったことのない人3人に会う」という目標を設定したりするかもしれない。

 ビル・ゲイツは年に2回、「考える週」を設けていたことで知られる。その週はオフィスから離れて、読書や新しいアイデアを思い描くことに費やしたという。大多数のプロフェッショナルにはなかなかマネのできない話だが、たとえ週に2~3時間でも視野を広げる活動に充てれば、前向きな気持ちで取り組み、興味を持ち続けるのに役立つ。

 ●新しい友達をつくる 

 一緒に時間を過ごす人は、あなたの活力と気分に大いに影響を及ぼす。考え方まで変える力がある。

 ところが、気がつくと毎週、同じような話題について同じような人と話しているという状態に陥っていないだろうか。

 そこから抜け出して、まだ知らない人たちに出会おう。あなたとは違う分野で活躍している人たちの中から、思索のパートナーやガイドを見つけ出すには、意識して努力をする必要がある。ロールモデルがいれば、彼らの経験を自分と重ねることができ、そこからインスピレーションが湧いてくる。刺激を受けて新しいアイデアが出てきて、まだ見ぬ未来を垣間見ることができる。

 あなたよりも数年、あるいは数段階先を行くロールモデルがいれば、あなた自身の状況を見直し、自分に何ができるのかを考え直す助けになる。尊敬する資質を持っている人たちのリストを作成しよう。その際、完璧を目指すよりはむしろ、2~3の資質に照準を合わせるべきだ。

 ロールモデルと実際に関係を築く必要はない。遠くから手本として観察して、学ぶだけで十分だ。ロールモデル自身が、あなたのロールモデルであると自覚している必要もない。

 ●選択肢を絞る 

 ときには、何をすればよいのかわからなくてモチベーションが上がらない、ということもある。いまの職にとどまるべきなのか、別の職を求めて会社を去るべきなのか、新しいキャリアを試してみるべきなのか、部署を異動すべきなのか、昇進を求めるべきなのか。

 心理学教授のバリー・シュワルツが『なぜ選ぶたびに後悔するのか』で述べているように、選択肢が多すぎると身動きが取れなくなる。圧倒されてしまい、何もできないケースが少なくないのだ。

 モチベーションを引き上げるには、選択肢を絞り、それに向かって行動しやすくすることだ。計画があり、それをこなしているとわかれば、気持ちが楽になる。行き詰まりを感じている場合は、あらゆる選択肢を書き出し、上から順番に最もワクワクするもの3つを選んでみよう。そして、その3つのために時間を割り当てるのだ。

 これは、スランプに陥っている時だけにとどまらない。インスピレーションを感じているときにも、その状態を維持できるように、こうした行動を続けることが重要だ。

「インスピレーションはとらえどころがない」と感じる必要はない。あなたの腕次第で、新たなひらめきやアイデアが湧くチャンスは増やせるのだ。

 かつて作家のジャック・ロンドンはこう言った。「そこらをうろつきまわって、インスピレーションなんかを待ってたんじゃいけない。棍棒でもってそいつを捕まえるんだ。たとえ捕まらなかったとしても、それに実によく似たものは手に入るはずだから」


HBR.ORG原文 How to Rediscover Your Inspiration at Work, September 05, 2017.

■こちらの記事もおすすめします
ひらめきを得るには、本題と無関係の作業を挟もう
ひらめきのしくみ〜これだけは変わらない私のルール〜
ひらめきは組織的に生み出せる

 

クリスティ・ヘッジス(Kristi Hedges)
エグゼクティブ・コミュニケーションを専門とするシニア・リーダーシップ・コーチ。著書に、The Inspiration Code(未訳)や、『誰もがあなたに引きつけられる プレゼンスのつくり方』など。 ザ・ヘッジス・カンパニーの社長。ジョージタウン大学インスティテュート・フォー・トランスフォメーショナル・リーダーシップのファカルティ・メンバーでもある。