だが私は、次に何が起きるかを知るためにCEOはSFを読むべきだと言いたいわけではない。

 SFは未来を描いていると考えられがちだが、実際には現在を映し出している。最近、ベストセラーリストのトップに躍り出たジョージ・オーウェルの『1984年』は、実際にはオーウェルが書いた年である1948年が題材だ。同書に2017年のことが書かれていると、これほど多くの読者が感じているということは、すなわち、人間の本質を見抜き、テクノロジーと権力と社会の常に変容する関係をとらえるオーウェルが、並外れた洞察力を持っていた証拠だろう。

 SFは、予言的だから役立つわけではない。私たちの世界観を再構築するから、役立つのだ。海外旅行や瞑想のように、SFも心に別宇宙をもたらすので、自分の思い込みにみずから疑問を持つことが可能になる。

 思い込みによって、19世紀最高の知識人たちは、「都市が馬糞に埋没する運命にある」と信じて疑わなかった。1975年に世界初のデジタル・カメラを開発した企業だったにもかかわらず、思い込みによって、コダックは転落した。思い込みは、真のリーダーには許されない贅沢だ。

 だが思い込みは、撃退するのが困難なことでも知られる。そこには、もっともな理由がある。思い込みは有用なのだ。私たちは思い込みによって、世界を理解する近道を手に入れる。思い込みによって効率性と生産性が高まる。

 問題は、世界が変わるときに思い込みが更新されないことだ。そして世界を変えうるとき、思い込みが邪魔をする。

 そういうわけで、大志を抱く人にとってSFは貴重だ。グーグルもマイクロソフトもアップルも、SF作家をコンサルタントに招き入れている。

 架空の未来を探索することで、私たちの思考は誤った制約から解放される。正しい質問をしているだろうかと、疑問を持つようになる。想像力のほうが分析より大切なときがあると、認めざるを得なくなる。

 だから、最新の白書や産業概要報告、経営速報記事はオフィスに置いておこう。次の休暇では、SFのペーパーバックを手に取ることをお勧めする。


HBR.ORG原文 Why Business Leaders Need to Read More Science Fiction, July 14, 2017

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エリオット・ペパー(Eliot Peper)
作家。著書にCumulus、True Blue、Neon Fever Dream、およびUncommon Series(いずれも未訳)の3部作がある。オンラインマガジンScoutのエディターでもある。テクノロジー分野の起業家と投資家にアドバイスも提供している。