みずから痛みを伴う変化を起こせるか

 現在は伝統企業と呼ばれる歴史ある企業もみな、かつては新興企業であった。リスクを負って一歩を踏み出し、その時代に革新をもたらした破壊者であったからこそ、いまがあるはずだ。

 だが、成長に伴って徐々に「会社」としての完成度も高まるにつれて、自身で確立したビジネスモデルの中で戦うための最適な環境が整うと同時に、破壊者の表情は影を潜め始める。そして、かつての新興企業が、ひとたび破壊者から既得権益者へと立場が変わると、みずから自己否定して、ふたたび大変革に踏み出す気概を取り戻すのは容易ではない。

 しかしながら、もはや「難しいから、できません」とは口にできない時代になったことも確かである。あらゆる業種・業態において、技術革新を軸とするビジネスモデルの破壊が起こり続けるなか、現状維持は衰退と消滅を意味すると言っても言い過ぎではない。

 破壊者となって攻めるのか、それとも、覚悟を決めて徹底的に守り通すのか。いずれの選択をする場合であっても、そこには何かしらの痛みを伴い、特に経営者にとっては厳しい決断になるだろう。

 ジェフリー・ムーアが突きつけてきたのは、成熟を迎えた伝統企業に対する厳しい現実であると同時に、いますぐ動き始めれば間に合う(かもしれない)という希望でもある。本書は『キャズム』以来の新鮮さを覚える、示唆に富む一冊であった。