これらの分野は長きにわたり、顧客ごとにサービスをカスタマイズして提供するマッキンゼー・アンド・カンパニーやベイン・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループなどのコンサルティング会社、そして大手マーケティング会社の牙城であった。

 AIソリューションへの移行は、経営コンサルティング業界にとって、折り合いをつけるのが難しい経験となるだろう。最近の調査によれば、米国における経営コンサルティング市場の規模は600億ドル近いが、その経営アドバイスのほぼすべてが高額であり人間に依存している。

 法人顧客が好むのは、戦略コンサルタントと直接言葉を交わすことであり、金と時間がかかる仕事を少人数チームに担ってもらい、高額だが自社に特化したアドバイスをもらうことだ――という意見もあるかもしれない。我々も、コンサルタントが洞察に富んだ助言と指針を提供するという点では同意見だ。

 しかし、コンサルティングサービスに対する支払いの大部分を占めているのは、データ分析とプレゼンテーションだ。コンサルタントは組織のさまざまな部分からデータを集め、整理し、処理し、解釈する。彼らはこの仕事に非常に長けているが、AIはもっと優れている。たとえば、エクセルを使う4人の優秀なコンサルタントの処理能力は、継続不断に機械学習を行うAIを搭載したスマートコンピュータ1台を1時間稼働させるのと比較すれば、取るに足らない。

 今日のビッグデータの世界では、AIと機械学習のアプリケーションはすでに、大量の構造化・非構造化データを分析し、金融業界のコンサルタントに比べると微々たる時間とコストでインサイトを生み出している。さらに、機械学習のアルゴリズムは、データからパターンを見出して規則性を推測することにより、複雑な現象を理解するコンピュータモデルを構築できる。

 これは、最大級の規模と優秀さを誇るコンサルティングチームでも非常に難しいプロセスだ。おそらく我々が考えるよりも早期に、CEOは一流のコンサルタントに頼る代わりに、アレクサにこう問いかけるようになるだろう。「アレクサ、我が社の製品ラインの収益性はどうなってる?」「どの顧客層を、どのようにターゲットとすべきだろうか?」

 リーダーがじきにAIに頼るであろうもう1つの分野は、人材マネジメントだ。多くの人が最善の努力を尽くしてはいるものの、指導・教育、昇進、そして報酬に関する決定は、間違いなく政治的なものである。数々の研究により、根強い偏見が女性やマイノリティへの接し方に影響を及ぼすことが示されている。

 たとえば、女性は男性に比べて、ビジネスにおいてよりネガティブな言葉で表現され有益なフィードバックを受け取ることも少ない。マイノリティは、雇用される可能性がより低くマネジャーからの偏見に直面する可能性がより高い。体制におけるこれらの不備や不平等は、組織をダメにするだけだ。こうした状況ではリーダーは、全従業員の能力を育てることも、成果を適切に認めて報いることも十分にできないからである。

 AIは、こうした難しい判断事項に公平性をもたらす手助けができる。たとえば、従業員の中である集団が、他と異なる形で評価や管理や報酬を受けていないか判定できるだろう。リーダーが次のような問いかけをすることも考えられる。「アレクサ、うちの組織には性別による賃金格差があるだろうか?」(もちろんAIは、システムに提供されたデータと同じだけの公平性しか持ちえない)。

 さらにAIは、顧客エンゲージメントとマーケティングの領域でもすでに役立っている。アップル、アルファベット、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトという5大プラットフォーム企業による、AI関連の特許申請の動向を見れば、彼らが商品・サービスのマーケティングや販売にAIを利用しているのは明らかだ。

 それは、これら5社だけではない。HBRは最近の記事「ハーレーダビッドソンのAI活用法:見込み客2930%増をどう達成したのか」の中で、同社が複数のチャネル間で有効なマーケティング施策を判断するのに、AIをどう利用しているかを報告した。同社はこの新たな能力を活用して、さまざまなマーケティングの選択肢に対してリソース配分の決定を下し、これにより「憶測を排除」している。

 マーケティング予算の半分が無駄なことはわかっているが、その無駄がどの部分かはわからない――。こんな古くからお馴染みの言い回しの代わりに、次のような問いが聞かれるのは時間の問題だろう。「アレクサ、マーケティング予算をどこに割くべきだろうか?」「マーケティング予算の半分が有効なのはわかっているが、それがどの部分か教えてくれない?」

 AIはまた、予算管理や毎年の資本配分のプロセスにも貢献できる。

 市場が毎年劇的に変化し、技術が進歩して製品が時代遅れになるにもかかわらず、ほとんどの企業は資本を毎年同じように配分している。それが惰性によるものであれ、無意識の思い込みや過ちのせいであれ、一部の事業部は潤沢なリソースを手にしている一方で、他の事業部は困窮している。経営チームが新たなデジタル事業に注力していても、キャッシュカウ(成熟・衰退市場で儲かっている事業)に潤沢な資金が投入されたのちに、結局はその新規デジタル事業が廃止されることもよくある。

 AIは、こうした予算管理上のブラックホールをなくすことができる。事業部ごとの投資利益率を追跡したり、落ち目の製品ラインと成長中の製品ラインに予算がどう配分されているかを測定したりすることで、それが可能となるのだ。ビジネスリーダーはいずれ、こんなふうに尋ねるだろう。「アレクサ、我々に対する予算配分の何パーセントが昨年から変わっているだろうか?」。そして、もっと複雑な問いかけも。