●芯からの腐敗

 こうした戦略を実行するうえで、ウーバーは大きな課題に直面する。人々に罪を犯させるのは、たやすいことではなかったのだ。実際、従業員はいたる所で、法に逆らうことで個人的にも職業的にもリスクに見舞われた。たとえば欧州の幹部2人は、必要な許可なく営業したために告訴、逮捕された。

 だがウーバーは、タクシー関連法の妨害を奨励することで、違反の常態化、ルーティン化に成功した。ウーバーが掲げるモットーを見るとよい。「やる気満々で」「常に張り切って」、そして「大胆であれ」。法の尊重は些細なことにすぎないのだ。

 ウーバーの弁護士陣は、法を犯す企業文化の形成に加担した。普通の企業の経営者は、いかにビジネスを法の範疇にとどめるか助言を仰ぐために弁護士を頼る。これに対しウーバーでは、元相談役で最高法務責任者となったサーリ・ユー率いる法務チームが、Greyball(グレイボール)なるソフトウェアの利用を承認した(政府の調査官に偽りの情報を提示し、自社の慣行を隠ぺいするための技術)。

 また報道によれば、彼女は、自社を告訴した相手の友人や同僚から聞き取り調査を行う私立探偵の雇用にまで携わったという。

 法の逸脱を奨励する企業文化を構築したウーバーが、度重なるスキャンダルに直面したのは決して偶然とは言えない。ウーバーのマネジャーは、どの法を順守し、どの法を無視してもかまわないのかを知っているとでもいうのだろうか。

●低みへの競争

 16世紀の財政家トーマス・グレシャムは、「悪貨は良貨を駆逐する」という現象を見出したことで知られる。同じことは違法なビジネスモデルにも言えると、私は考える。ある業種で違法なビジネスモデルの繁栄が許されてしまうと、じきに同業や異業種の他社はこう受けとめるだろう。法を無視し、正式な許可ではなく許容を求め、あとは最善の結果を期待していればよい、それこそが賢明な戦略である、と。

 運転手に自家用車で輸送するよう最初に持ち掛けたのは、リフトである。実のところ、ウーバーは当初、配車の正当な許可を得たライセンスを持つ黒塗りの車でのみサービスを提供していた。だが、リフトが一般車両でサービスを安く提供し始めるにつれて、ウーバーは対応を迫られたのだ。

 カラニックが2013年4月に自社サイトに掲載した投稿は、注目に値する。ここで彼はリフトのアプローチを「非常に強引」で「認可されていない」と述べ、一般人運転手の違法性を認めたも同然であった(2015年に私がこの投稿に最初にフラグを立てたのち、ウーバーは同文書をサイトから削除。だが、Archive.orgがコピーを保存していた。私自身も、同文書の最初の画面のスクリーンショットのほか、全文書のPDFおよびその印刷向きPDFを保存している)。

 カラニックはまた、2013年6月のフォーチュン・ブレインストーム・テック・カンファレンスにおける口頭の発言でも、リフトの一般人運転手によるすべての輸送は営業許可と営業用保険がないため「軽犯罪」であると述べている。

 こうしたカラニックの発言を踏まえれば、ウーバーはリフト相手に訴訟を起こしたか、規制当局に苦情申し立てをしたであろうと思われるかもしれない。法の違反によって優位性を得た会社が始めた不公平な競争を終わらせよう、と。ところが、ウーバーはリフトのアプローチを採用し、発展させた。他社もウーバーに学び、追随する。ウーバーが非認可の車両を使うと知って、競合他社も乗り遅れないように踏襲した。

 つまりウーバーは、都市部の輸送ビジネス全体を違反の常態化へと動かし、他業種に対しても前例を作ったのである。