衰退メカニズムを止める
「くさび」とは何か?

 このことを破綻企業の調査で突き止めた著者は、その特徴を書いたメモを優良企業の社員に見せると、著者の予想に反して、彼らは「耳が痛い」「身につまされる」と、同様の傾向にあることを認める。つまり、これらは優良企業(そして恐らく日本企業全般)にも見られる傾向ということになる。

 しかし、さらに優良企業の調査を進めていくと、破綻企業とは異なる特徴が明らかになる。このサイクルに歯止めをかける機能を果たす「くさび」があるのだ(この点については、本書を読んで頂きたい)。

 ここに(本書p237)、「破綻という悲劇を迎える前に、そのメカニズムを何とか是正してほしい。本書を出す理由は、この点に尽きる」という、本書の冒頭に書かれた、読者すなわち日本企業のビジネスパーソンへの提言についての詳細な解説がきちんと書かれている。

 博士論文を基にしているので、そのルールに従って、先行研究の紹介があり、分析手法の学術的解説とデータの提示があり、経営についての研究をまとめてみたいと考える読者には、とても勉強になる。

 さらに、そのあたりの細かな解説は飛ばして、即座に役に立つことだけを知りたいという実務家向けには、「次の節はスキップしても構わない」と明示され、親切である。一方で、学術的ではない、しかし、とても面白い小話が随所に入り、読者を飽きさせない作りになっている。ビジネスパーソンが読むべきテーマを、正当な方法で分析し、なおかつ読みやすく著している本である。

 次に続く研究では、優良企業はいかにして、この「くさび」を持ち、持続しているのか、新たに「くさび」を導入するには、どうしたらいいのか、さらに詳しく知りたいところである。