新人の起業家が最初にすべきことの1つは、自社に関する明確なストーリー、創業の理由、目標をつくり上げることだ。これこそ、チームを惹きつけて動機づけ、会社の戦略を構築し、顧客と投資家に売り込むための基礎となる。また、これはメディア戦略の最初のステップでもある。ただし肝心なのは、オペレーションや物流やビジネスモデルの主要な問題が未解決のまま、ストーリーテリングに気を取られないようにすることだ。

 パブリシティを狙う絶好のタイミングは、新規クライアントの獲得や新製品の投入など、会社が勢いを得たり、節目の目標を達成したりするときである。まずは目標に向け注力し、それを達成してから成果をアピールするのだ。そして、いざメディアの注目を浴びる段階になったら、ニュースを広範に伝え、主要なステークホルダー(投資家やパートナー企業など)の目に触れるようにしよう。

 ネガティブな報道については、過度の心配はいらない。失敗が注目を浴びるほど、ニュース価値のある会社になったという証拠なのだ。

 創業初期のスタートアップへのもう1つ重要なアドバイスは、PRの会社やスタッフに無駄金を使わないことだ。本当に効果をもたらす強力な会社を雇うには高額がかかるし、無料または割引価格でのPRサービスは避けたほうがよい。ただし、出身大学の広報部やアクセラレーター・プログラムなどの機関とつながりがあれば、無料でPRしてもらえる絶好の機会を得られる。しかし結局のところ、創業初期に自社のストーリーを最もうまく伝えられるのは、自分たちを置いて他にいないのだ。

 知名度を高めて成長を伝えるためのメディア戦略はあらゆる企業に必要だが、それはパズルの1ピースにすぎない。メディア活動は、会社の他の部分の成長を補完するものであり、それらと歩調を合わせて進めるべきだ。さもないと、実現不可能なイメージをつくり上げてしまうリスクが生じる。

 成功する企業は自社のストーリーを効果的に伝えるが、伝えるべき中身も伴っているのだ。


HBR.ORG原文:Why Startups Shouldn’t Chase Media Buzz  June 05, 2017

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アンドリュー・ザカラキス(Andrew Zacharakis)
バブソン大学ジョン・H・ミュラー・ジュニア寄付講座教授。アントレプレナーシップを担当。同校アントレプレナーシップ研究会のディレクター。5冊の共著がある。

アリサ・ジュノ=チャールズ(Alisa Jno-Charles)
インディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネスの博士課程学生。スタートアップ、メディア、イメージ、アイデンティティの関係について研究。上場・非上場の株式投資業界および不動産業界で10年以上の経験を持つ。