セラノスは極端な例かもしれないが、たいていの創業者は同じようなメディア報道(および提灯記事)を強く求める。パブリシティは事業の進展を示す重要な初期シグナルとなり、会社の成功に必要となる顧客やパートナー企業、従業員、投資家を惹きつける役に立つ――そう心得ているからだ。

 これを裏付ける研究もある。テクノロジー・スタートアップに関するある調査によると、会社発展の初期段階で業界メディアへの露出が多いほど、その後ベンチャーキャピタルから獲得する資金が多いという。

 また、ベンチャーキャピタルの資金提供を受けた企業60社を対象にした我々の調査では、最終的に投資家に利益をもたらした企業は、その過程においてメディアで取り上げられる機会が多い傾向が見られた。成功した企業は失敗したベンチャーに比べ、自社にまつわる記事や見出し、掲載媒体の数が多く、プレスリリースを発信する頻度も高い。

 メディア報道とスタートアップ成功の相関を示す研究結果を見れば、起業家は、コミュニケーション戦略に時間と資金を注ぎ込もうと躍起になるかもしれない。ところが、話はそれほど単純ではない。たしかに、コミュニケーションは事業構築に欠かせない要素の1つだ。しかしメディアの注目は、事業の中核が本当に成長し勢いづくことによって得るべきである。

 一見すると当たり前のように思えるが、あまりにも多くの創業者がこの点を見過ごしている。早期にメディアの関心を引こうと焦り、好意的に報じてもらおうと気をもむからだ。早すぎるタイミングでメディアへの登場を増やすと、顧客に対する約束を果たせなくなるかもしれない。さらに我々の調査によると、好意的なパブリシティを求めて腐心するのは労力の無駄かもしれないのだ。

 我々の分析では、ネガティブな報道をされた割合は、成功した企業が4.5%、失敗した企業が2.6%と、前者のほうが高かった。これは「報道されれば何でもOK」ということではない。だが記事にされるということは、会社がある程度成功しており、PR的な提灯記事にとどまらない、懐疑的な報道に値すると見られている証拠なのだ。たとえば、性差別とドライバーの待遇をめぐる昨今のウーバーの問題は、同社が業界リーダーでなければ取り上げる価値もなかっただろう。