根底にあるのは人間力

 本書は3つのPartに分かれている。まずPartⅠで、これら7つのダークサイド・スキルについて解説している。7つのスキルとは、①思うように上司を操れ、②KYな奴を優先しろ、③「使える奴」を手なづけろ、④堂々と嫌われろ、⑤煩悩に溺れず、欲に溺れろ、⑥踏み絵から逃げるな、⑦部下に使われて、使いこなせ、だ。著者の豊富な経験から、それぞれに具体的な事例で説明されるので、納得感がある。多様性はなぜ必要でどう身につけるのか、上にも下にも通じるための情報回路はどのようにつくるのか、己を知ることはなぜ大切で何をすればよいのか、一つひとつのスキルの獲得の仕方もわかりやすい。Part Ⅱは、ダークサイド・スキルを磨き、使いこなすポイントについて説明するが、「先送りはダメ」「数字に強くなれ」「ぶれるな」など、こちらのアドバイスも具体的である。

 しかし、ここまで読み進めていくと、(本書でも言及されていることだが)ダークサイド・スキルとは、人間力に尽きるのではないか、と思わされる。懐が深くて、ぶれない価値観を持ち、火中の栗も拾える――本書を読むと、ダークサイド・スキルを持ったリーダーとしてそんな人物像が浮かぶが、これは日本企業のみならず、グローバルにも通じる、人間的魅力に溢れたリーダーではないだろうか。そして、こうした人間力は一朝一夕に身につくものではない。本書は、「古くて大きい会社」のミドルに向けて書かれてはいるが、リーダーを目指す若手が読んでも、意味がある。

 なお、最後のPart Ⅲは、著者がメンター(メンターを持つのもダークサイド・スキルに欠かせないそうだ)と仰ぐ良品計画 名誉顧問の松井忠三氏との対談となっている。松井氏の経験談は、ダークサイド・スキルの実践編ともいえ、本書になぞらえながら読むと興味深い。