――今回のレポートでは、大企業が買収候補を発見・獲得する方法を3つ紹介しています。

 はい。1つは、スタートアップのネットワークを継続的に精査しながら、ネットワークに参加しているメンバーのスポンサーやスピーカー、共同主催者になることで、メンバーとの関係構築を図る方法。2つ目は、ベンチャーキャピタルやアクセラレータ(支援企業)を通して、獲得したいターゲットを発掘する方法です。そして3つ目は、オープンイノベーションを通じてデジタル企業との接点をつくる方法です。

 最初のポイントは最も一歩を踏み出しやすいものですが、具体的にはSlushやTechCrunchといったスタートアップイベントにスポンサーシップとして参加し、ネットワークを拡大するやり方です。日本で開催されているイベントにはグローバル系の企業に加え、日本の企業もスポンサーとして入っています。ただし、シンガポールやヘルシンキなど海外で行われている同イベントに日本の企業はスポンサーシップとして入っていません。一方、Samsung、Siemens、Nokiaなど日本企業がグローバルで戦っている競合は参加をしている現状があります。

 2つ目のポイントですが、最近ではコーポレートベンチャーキャピタルをデジタル系の企業との接点獲得手段とする企業が増えています。グローバルのコーポレートベンチャーキャピタルにおける投資件数は2012年に年間780ディールだったものが2016年には1422ディールに、2017年の上期においては昨年のペースを上回り、過去最高件数に達する見込みです。

 コーポレートベンチャーキャピタル業界においては、インテル、クアルコム、マイクロソフトなどのIT系企業が上位を構成していましたが、GE、ジョンソン&ジョンソン、ユニリーバなどの非IT系の企業もアクティブなインベスターになっています。日本企業においてはサイバーエージェント、楽天、グリーなどのIT系はグローバルレベルでも上位に入っていますが、いわゆる非IT系でアクティブなコーポ―レートベンチャーキャピタルは少ないのが現状です。(出典:CBINSIGHTS THE H1’17 GLOBAL CVC REPORT)

 そして3つ目のオープンイノベーションは、2つ目のコーポレートベンチャーキャピタルを通して実現していくことも多いですが、企業の方から積極的にスタートアップを勧誘するアクティビティです。例えば、GEは「自社がフォーカスしている4つのエリア(Software & Analytics、Healthcare、Energy、Lightning & IoT、ADV, Manufacturing & Enterprise)を開示し、該当する技術を持つスタートアップにはスポンサーになることを明言しています。GEは現在スタートアップに加え、大企業や大学、政府などと300以上ものOpen Collaborationをしていると公表しています。残念ながら、ここまでオープンに活動している日本企業はまだありませんが…。 

 また、上記のような活動を開始するにあたり、日本企業を悩ませるのがリードしていく人材です。スタートアップの動きやそれぞれの技術を把握するためには、既存のM&Aチームにデジタルテクノロジーの見極めができる人を迎える、あるいはダイムラーのように専任組織を結成するという2つの方法が考えられます。ダイムラーでは、買収したデジタル企業のファウンダー(創立者)にさらなるM&Aのマネジメントをしばらく任せ、その人脈やデジタル技術の目利き力を生かして次の買収を仕掛けるということも行なっています。