日本企業はアライアンスや実証実験どまり

―― 一方の日本企業については昨年、「デジタルM&Aが重要」という認識はあるものの、行動が伴っていないというお話でしたが、現在はどうでしょうか。

 ソフトバンクによるarmやBoston Dynamics、KDDIによるソラコム買収など案件としては出始めていますが、残念ながらグローバルのようにあらゆる業界でデジタルM&Aが発生している状況ではありません。ただ、日本のトレンドとして、企業間のアライアンスや実証実験が活発化しています。

 具体的には、(1)ブロックチェーン、(2)自動運転、(3)インダストリアルソリューション(モノづくりの革新)――の3つのテーマが挙げられます。しかし、大きなデジタルによる変革で市場が急速に破壊、創造される中で、アライアンスというオーナーシップがあいまいになりがちなモデルで革新を起こせるかという点は疑問です。

 最近の日本では、「借りるべきか買うべきか」という議論がよくあります。買うよりも、まずは借りられないかというスタンスです。

 しかし、何でも借りればいいというわけではありません。そこで私たちは、クライアントに対して2つの判断基準を提案しています。

 1つは、そのテクノロジー自体が新しいビジネスモデルやサービスのコアケイパビリティになり得るかどうか。コアでなければ、借りればいい。しかし、コアになるなら競合先が買収して先を越される可能性があるため、早く自社に取り込むべきです。

 もう1つは、継続的なテクノロジーの進化が必要かどうか。コアであっても一過性のものであれば、借りてもいい。でも、その技術を進化させていかなければならないのであれば、自社に取り込み、継続的に投資して育てていく必要があります。

これまでのM&Aのやり方では
適切な買収候補は見つけられない

――日本企業はなぜ、デジタルM&Aが少ないのでしょう?

 私たちはその理由を探る中で、自社に必要なデジタル能力が何かをわかっていても、「適切な買収候補を見つけることが難しい」という問題があることに気づきました。

 なぜそうなのかというと、買収候補を探す際に、多くの日本企業がこれまでのM&Aのやり方に依存しているからです。これまでの手法は、大型で動きが鈍いターゲット、いわば「マンモス」のような大企業を見つけるのには有効です。しかし、今必要としているデジタル能力を身につけた小型で動きの速いターゲット、いわば「ウサギ」のようなスタートアップを見つけるには不向きなのです。

 これまでのM&Aで対象会社探索の大きな情報源を担ってきた投資銀行は、ディールの規模でフィーが決まるビジネスモデルであるため、小規模で儲からないスタートアップには目もくれません。

 ですから、自ら動いて探すことが必要なのです。具体的には、早い段階からスタートアップとのダイレクトな接点をつくり、ライバル企業が動き始める前にスタートアップのテクノロジー、ビジネスモデルを理解しておくことが必要です。

 昨年まとめたレポートでは、買収対象となるデジタル企業を発見した後の対応、つまりDD(デューデリジェンス)やPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)にウエイトを置いていましたが、今回のレポートでは入り口のところに立ち返り、「適切な候補企業の発見と獲得」に重点を置いています。