第1は、睡眠だ。睡眠には、驚くほどセルフコントロールを回復させる効果があるとされる。ある研究結果によれば、夜、熟睡した(その定義は「中断を最小限に抑えて睡眠を確保した」)リーダーは、熟睡しなかったリーダーよりも、セルフコントロールを働かせて、仕事の出来が良くない部下を怒鳴りつけたり、罵ったりするといった横柄な管理態度を控える傾向がはるかに強かった。

 現代の企業はしばしば、「生産性の向上」という名目で、社員に従来の業務時間を超えて働くことを要求する。だが、これは逆効果になりかねず、社員のセルフコントロール喪失により、ネガティブな職場態度を引き起こすおそれがある。企業はむしろ、長時間勤務がいかに社員の態度と福利に影響を与える可能性があるかを心に留めるべきだ。たとえば、グーグルは、社員が仮眠をとってエネルギーを回復させられるように、オフィスにカプセルベッドを設置した。

 第2に、「笑顔でサービス」は、いつでも報われるわけではないのかもしれない。サービス重視の企業は往々にして、社員に顧客の前では笑顔を絶やさぬように強いる。これは短期的には顧客を喜ばすかもしれないが、他の組織的な問題を引き起こす可能性がある。

 この慣行を中止することはおそらく、実際的な選択ではないだろう。だが、自己の感情表現をうまく活かせるように社員を育成することを、企業は検討すべきだ。たとえば、別の研究結果によれば、患者の立場に立って患者に心から共感した医師は、セルフコントロール力が低下せず、また燃え尽きなどのネガティブな状況に陥らなかった。他方、共感しているふりを強いられた医師は後に、極度の疲労と仕事への満足度の低下を報告した。サービス業務の従業員も自分の感情を偽るよりも、相手の立場から物事を見つめようとすることで利益を得るかもしれない。

 第3に、適切な環境づくりが、セルフコントロール低下に伴うネガティブな言動の一部を防止する役に立つ可能性がある。たとえば、我々が精査した論文の中には、「セルフコントロール力が低い社員でも、企業が倫理的な企業文化を推進しているとき、逸脱した言動をとる傾向が強まることがない」と実証した研究もあった。会社の行動規範を社員の目につく所に掲示することによって、倫理にもとる言動をとりたくなる気持ちを抑制することに成功したのだ。この種の介入は、短期的には極めて効果を上げる傾向がある。

 最後にまとめると、セルフコントロールできない状態を避けるカギは3つだ。 

1)体を休ませてセルフコントロール力を回復させる。 
2)既存の会社方針が社員のセルフコントロールを気づかないうちに損なっていないか、再検討する。 
3)セルフコントロールの低下時にネガティブな言動を抑止する社風をつくる。


HBR.ORG原文 Leadership Takes Self-Control. Here’s What We Know About It, June 05, 2017.

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カイ・チー・(サム)ヤム(Kai Chi (Sam) Yam)
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ウォータールー大学の教授。産業心理学と組織心理学を担当。