このような潜在的な影響を調べるために、株式公開企業4710社から2010年のデータを集め、その後5年間のうちに経営破綻したかどうかを調査した。その業種は、サービスからハイテク、製造まで83におよんだ。金融会社を含めなかったのは、ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法が導入されて以来、金融会社の倒産状況に変化がもたらされたためである。我々が対象とした企業のうち、フォードやペットメド・エクスプレス、リーガル・シネマズを含む24%は、2010年に労働力を3%以上削減していた。

 調査の正確さを期するために、ダウンサイジングと経営破綻に共通する既知の潜在的な要因が、調査結果に影響を及ぼさないよう配慮した。具体的には、企業の規模や時価総額の変化、過去の業績、収益性、アルトマンZスコアを用いて算出した倒産危険度、同業他社と比較した売上高当たりの従業員数、その他財政の健全性を示す指標について調整を行った。企業が削減した従業員の数は異なるため、ダウンサイジング時に削減した従業員の割合で調整した。また、過去5年間における企業買収の件数(ダウンサイジングは企業買収後に行われることも多いため)と、業種の違いも考慮した。さらに、我々の知見を異なる期間(1995年~2000年)でも確認した。

 この結果、ダウンサイジングを行った企業は、ダウンサイジングを行わなかった企業よりも、倒産に至る可能性が2倍高いことがわかった。短期的な経費削減などのプラスの成果を生む可能性がある一方で、倒産の可能性を高めるマイナスの方向に企業を向かわせるのである。ダウンサイジングは、常に命取りになるとはかぎらないものの、企業が将来的に倒産に至る確率を実際に大きくしている。

 この知見を受けて、我々は、ダウンサイジングのマイナスの影響を乗り越えられる企業がある一方で、生き残れない企業もあるのはなぜかを理解しようとした。そして、調査した企業に残った財産が、この疑問に答えるヒントを与えてくれるのではないかと推測し、無形財産(貸借対照表に示されない企業価値を測るトービンのq理論で示した)、金融財産、物的財産を調査した。

 その結果、数多の金融財産と物的財産を有していても、ダウンサイジングで失った従業員の代わりにはならないことが明らかになった。従業員は、企業において働き手にして知識保持者、企業文化の貢献者、と複数の役割を果たしていた。豊富な資金を有することは、往々にして企業の万能薬と見なされる。しかしながら金融財産は、ダウンサイジングした企業の経営破綻を防ぐ助けにはなっていない。これは、予想外で興味深い発見であった。

 一方で、無形財産は、ダウンサイジングをする企業が倒産に至る確率を下げることも明らかになった。無形財産は、ダウンサイジング後にユニークかつ、おそらくは革新的な方法で再配置が可能だ。たとえば、残っている従業員が持つ知識は、中断されたプロセスを刷新したり、より効果的なプロセスと替えたりするのに用いることができる。同様に、無形財産は多様な方法で利用が可能であるため、いなくなった従業員の穴を埋めるパートナーを呼び込むのに用いることができ、結果としてダウンサイジングによる打撃を和らげる。

 我々の知見からは、次のことが示唆される。

 企業のリーダーは、ダウンサイジングを決断する前に、ダウンサイジングからの短期的なプラスの見返りが、より深刻なものとなりうる長期的な打撃を上回るかどうかを検討すべきだ。加えて、財産ポートフォリオの詳細を調査して、ダウンサイジングによるマイナスの影響から自社が十分に守られているかを判断すべきである。重要な無形財産を失えば、従業員を解雇することで生じるマイナスの影響を乗り切る力も制限されてしまうだろう。

 ダウンサイジングがしばしば、大規模な組織再編計画の一部であることを考えると、経営陣は、マイナスの結果を招くリスクを抑えてくれる資源は確保しておくべきだ。何より重要なのは、ダウンサイジングを計画する際に、金融財産や物的財産より無形財産を重要視することである。企業が貴重な従業員を減らすのなら、無形財産はいっそう欠くことのできないものとなるのだから。


HBR.ORG原文 If You Think Downsizing Might Save Your Company, Think Again April 26, 2017

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ミシェル L. ゾーン(Michelle L. Zorn)
オーバーン大学ハーバート・カレッジ・オブ・ビジネス助教授。研究分野は、コーポレート・ガバナンス、企業買収、ダウンサイジング。

パトリシア・ノーマン(Patricia Norman)
ベイラー大学経営学部准教授。

フランク C. バトラー(Frank C. Butler)
テネシー大学チャタヌーガ校UC基金経営学部准教授。

マンジョット・バサー(Manjot Bhussar)
オーバーン大学の博士学位論文提出資格者。