●肯定的・建設的空想(PCD)を使う

 PCD(positive constructive daydreaming)は、一種の自由な瞑想であり、単なる夢想や、罪悪感とともに過去の悩みを掘り返すこととは違う。これを日常習慣として意識的に取り入れれば、創造性を高め、リーダーシップを強化し、脳に活力を取り戻すことができる。

 PCDを始めるにはまず、編み物や園芸、気楽な読書といった静かでささやかな活動を選び、自分の心の奥底へとさまようのである。ただし、単に夢想や罪悪感・不快感を伴う空想をするのではなく、何か楽しいこと、心から望むことを想像してみるとよい。たとえば、森の中を走り抜けたり、ヨットの上に寝そべったり、である。そのイメージを保ち、静かな活動を続けたままで、注意を外界から心の内部へと移していく。

 米国の心理学者であるジェローム・シンガーが何十年も研究してきたPCDは、DMNを作動させ、比喩的に言えば、脳が情報を見つける際の「食器」を変える効果がある。

 集中時の注意力は、フォークのようなものだ。脳内の明瞭かつ意識的な思考を1つずつ拾い上げる。これに対して、PCDは別の食器セットを使う。まず、スプーンであなたのアイデンティティを構成している美味な混合物をすくい(祖母の匂い、さわやかな秋の日に食べたアップルパイの最初の一口の満足感など)、箸で脳全体に散らばるさまざまなアイデアをつなぎ(これでイノベーション力が強化される)、さらに、細いスプーンでアイデンティティの重要な一部である長く忘れていた記憶を脳の隅から引き出してくる。この状態において、「自己」の感覚が強化される。まさに、米国の経営学者ウォーレン・ベニスの言うところの「リーダーシップの本質」である。

 私はこれを、「心理的重心(psychological center of gravity)」と呼んでいる。脳の敏捷性を高め、チェンジマネジメントを効果的に行えるようにする基本的メカニズム(思考力の「筋肉」の一部)である。

●昼寝をする

 リーダーは、PCDの時間を取ることに加え、公認の昼寝の時間を検討してもよい。昼寝ならなんでも同じというわけではない。脳がスランプ状態にあると、明晰さや創造性が低下する。10分間の昼寝をすると、脳がずっと明晰になり、注意力も上がるという研究結果がある。

 ただし、目の前にあるタスクがクリエイティブなものである場合は、脳を完全にリフレッシュさせるために、たっぷり1時間半は寝る必要があるだろう。人間の脳がより多くの連想をし、記憶ネットワークの隅っこにあるアイデアを掘り起こすには、これだけの時間が必要なのである。

●別人になりきる

 創造的なプロセスに行き詰ったときも、まったく違う人格になりきるという方法で集中力を解くことが突破口となる。

 2016年、教育心理学者のデニス・デュマスとケビン・ダンバーは、創造的な問題を解決したいときには、変わり者の詩人のように振る舞うほうが、規則を重んじる司書のように振る舞うより成功しやすいことを発見した。「ある物体(たとえば1個のレンガ)について可能な限り多くの用途を考えよ」という問題に対して、変わり者の詩人のように振る舞う人たちのほうが、創造的なパフォーマンス結果がよかったのである。この効果は、同じ人が別人の真似をした場合にも現れた。

 創造的な行き詰まりを感じたときには、ぜひ一度、別の人格になりきってみてほしい。自分の頭の中という枠を飛び出し、別の人の観点からものを考えられるはずだ。私はこれを「心理的ハロウィーン主義」と呼んでいる。

 長年にわたり、集中力はあらゆる能力のうちでもっとも尊重されてきた。やるべき仕事から注意をそらしてしまう時間が、起きている時間の46.9%にも及ぶため、人は、仕事に注意を向け続ける能力があれば、と切望している。

 そこで、PCDや10分または1時間半の昼寝、心理的ハロウィーンといった習慣を日常に取り入れれば、必要なときのために集中力を温存させられるうえ、ずっと効率的に使えるようになるだろう。さらに重要なことに、集中を解いている時間によって脳内の情報を更新することができるため、精神の深い部分にアクセスし、また思考の敏捷性、創造性、意思決定力を強化することができるのだ。


HBR.ORG原文 Your Brain Can Only Take So Much Focus, May 12, 2017

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スリニ・ピレイ(Srini Pillay)
医学博士。ニューロビジネス・グループの上級コーチおよびCEO。公衆衛生とリーダーシップ開発の分野におけるテクノロジー・イノベーターにして起業家であり、受賞経験のある作家でもある。最近刊はTinker, Dabble, Doodle, Try: Unlock the Power of the Unfocused Mind。ハーバード・メディカル・スクールの特任助教授であり、ハーバード・ビジネス・スクールではエグゼクティブ教育プログラムの教鞭をとり、デューク・コーポレイト・エデュケーションで講座を持つ。国際的な著名シンクタンクのメンバーでもある。