このトレーニングアプリの導入によって、生産性が10~25%上昇、育成コストは30~50%減、離職者も20~40%減少したという。

 アクセンチュアでも、約1万7000件のポジションを業務自動化に伴って再定義し、その業務にあたっていた社員のスキル再構築(リスキル)を実現。レイオフせずに、より高度な他業務に移すことができた。

「このような社員のスキル再構築の際に重要なのは、新しい組織への適応ではなく、社員自身の成長のためになるという意識を与えることです。従業員は単純に働くことだけでなく、自分が成長できることも企業に求めています。今後、そういう環境がなければ、優秀な人材は採用できなくなっていくでしょう」(大崎氏)

 2つめは「能力を発揮しやすい働き方を整備」すること。アクセンチュアでは、評価制度を多様な働き方に即したものに刷新した。会社の都合の相対評価ではなく、本人の成長目標にフォーカスした絶対評価としているのが特徴だ。また、社員自身がキャリアパスをデザインできるように、従業員は世界の募集中ポジションを検索、閲覧し、応募できる体制も整えている。

 最後は、「人材獲得のパイプライン強化」だ。

「これまでお話ししてきたスキルの体系的な再構築と働き方改革を進めていくと、いずれ社内、社外の境界線が低くなり、雇用環境も変わってくるでしょう。仕事はどんどんプロジェクト化され、社内に限らず、プロジェクトに必要なスキルを持つ人材を適時適材適所で多方面から採用することが必要になってきます」(大崎氏)

企業が人を選ぶのではなく
人が企業を選ぶかたちを目指す

 高砂氏は、労働者と企業経営者に次のようにメッセージを送る。

「労働者は、50年近くあるキャリアの中、いつ、どんな働き方をするかを主体的に考えなければならない。その際、テクノロジーの進化を前向きに捉え、自らのスキルを常に体系的に整理し再構築することが大切です。一方、企業は、スキル再構築を促進し、機能させるための育成体系や働き方を整備しなければいけない。ビジネスパーソンにとって魅力ある企業となるために、従業員のパフォーマンスを伸ばせる環境(従業員のエンゲージメントを高めること)を重視することが必要。企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶかたちを目指すべきです」

 さらに、企業や産業を超えたキャリアシフトを促進したり、労働者がリスキルするための制度や仕組みの整備を、国や産業レベルでも考えていくべきだと加えた。社会全体でスキル革命に取り組んでこそ、雇用や働き方の未来に光が差すと言えるだろう。

>> 「Future Workforce」に関するサイトはこちら

(取材・文/河合起季 撮影/宇佐見利明)