グーグルのAI製品担当マネジャーが、AI導入で企業が取るべきアプローチを示す。そのカギは、初期の失敗にめげず投資を続けることだという。
人工知能は、いままさにホットな話題である。多くの業界の企業が、負け組になる恐怖に駆り立てられて、AIに重点を置いた取り組みを宣言している。
だが残念なことに、これらの努力のほとんどは失敗に終わるだろう。それはAIが過剰な期待にすぎないからではなく、企業がAI主導のイノベーションに対して誤ったアプローチをしているからだ。
企業がこのような過ちを犯すのは、何も初めてのことではない。
1990年代後半に遡ると、インターネットが大きな潮流であった。ほとんどの企業がオンライン部門を立ち上げたものの、初期の勝者はごくわずかであった。そしてITバブルがはじけると、企業はオンラインの取り組みをやめたり、大幅に縮小したりした。
数年後、それらの企業は隙をつかれることになる。オンラインの新興企業が、音楽、旅行、ニュース、動画などの業界を破壊し、他の数多くの業界をも変革したのだ。
2000年代中盤には、クラウドコンピューティングの話題でもちきりだった。今度もまた、動向の静観を決め込んだ企業がいた。初期には規制順守やセキュリティなどの面でいくつかの問題があったため、多くの企業が自社のデータやアプリケーションをクラウドへ移行するのを取りやめた。
しかし、そうせずにクラウドにこだわった企業は、今日非常に有利なポジションを手にしている。みずからのビジネスプロセスを変革し、競合他社には容易に真似できないレベルの敏捷性を得たのだ。残る大多数の企業は、追いつこうといまだにもがいている。
初期段階での失敗によって、不合理な撤退をしてしまう――。この展開はAIについても同様に起きるだろう、というのが我々の考えだ。
初期のAIの試験的運用からは、ハイテクマニアが予測するような劇的な成果は生まれそうにない、という証拠がすでに示されている。たとえば、初期にフェイスブック・メッセンジャーのプラットフォーム用チャットボットを開発した企業の取り組みでは、ユーザーリクエストの処理の失敗率は70%であった。
だが、大企業がこうした取り組みを(失敗したからといって)撤回するのは過ちであろう。AIが業界を変革する潜在力は、本当に計り知れないからだ。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによる最近の研究では、業務活動の45%は今日のテクノロジーによって自動化される可能性を秘めており、うち80%は機械学習によってそれが可能になるという。
この報告はまた、製造や医療など多くの部門の企業が、データやアナリティクスへの自社の投資から潜在価値を30%も引き出せていないことを強調している。初期の失敗は往々にして、それらの投資を抑えたり、完全にやめたりする要因となっている。
基本的なアナリティクスですら、いまだ十分に利用せず成果を見ていない企業にとっては、AIとはパラダイムシフトである。したがって、短期間での大きなインパクトを期待するよりも、新たなプラットフォームで組織的に学びを得ることのほうが、はるかに重要だ。
とはいえ、最初のいくつかの取り組みが成果を上げなかった場合、マネジャーはAIへの投資の継続をどのように正当化したらよいだろうか。