第1の理由:無料の朝食は従業員のスケジュールを同期化する

 30分の限定された時間枠で提供される朝食は、従業員にとっては便利であり、会社にとっては従業員を同じ時間に出社させ、1日の仕事を同時に始めさせる効果がある。

 これがなぜ、それほど重要なのかを理解するために、無料の朝食サービスがないピボタルを思い描いてほしい。火を見るより明らかなのは、出社時間を決めなければ、大半の開発者は早起きしないということだ。たいてい午前10時か11時ごろにオフィスになだれ込むだろう。慌ただしくコーヒーを飲んで、もしかするといくつかメールを返信して、それからチームでの仕事を始める。

 気がつけば、もうランチの時間だ。でもまあいいじゃないか、デジタルワールドの住人なんだ。仕事をやり遂げさえすれば、いつ出社しても構わないだろう? その答えはノーだ。ペアプログラミングはペアを組む相手がいて初めて機能する。すなわち、ペアのスケジュールを同期化する必要があるのだ。

 サンフランシスコ本社は午前9時05分にカウベルを鳴らす(トロント・オフィスは金色のゴングを木槌で叩く)。それが朝食終了の合図になり、オフィス全体会議が始まろうとしていることを知らせる。5分間の朝礼後、そのまま立ったままでチームミーティングを行い、それからペアに分かれて、自分たちのワークステーションで作業に取り掛かる。

第2の理由:無料の朝食がスタッフのエネルギーレベルを均一化する

 あなたと私がペアを組んでいると仮定しよう。ただし、あなたはAタイプの人だ。午前6時起床、10キロのランニングをしてから、バランスのとれた健康的な朝食を手早く取り、午前8時45分に出社する。

 私はそちらのタイプではない。それほどやる気はなく(フィットネスに関して)、それほどきちんとしていない(時間管理に関して)。私は午前8時に起きる。かろうじてシャワーを浴びて地下鉄に飛び乗る。とはいえ、あなたも私も時間通りに出社し、立ちミーティングが終わり次第、9時15分にはペアを組んでいるワークステーションの席に着くのだから、万事OKだ。

 午前10時半ごろになると、何が起こるだろうか。まあだいたい想像がつくだろう。私は朝食を抜いたので、もう空腹だ。何か食べたいと思い始めると、集中できなくなる。もしかすると、空腹のあまりイライラするかもしれない。

 そこで私は、パートナーを残し、何か食べられそうな物を手に入れようとキッチンに向かう。残り物を物色したり、軽食として何を食べようか迷ったりして、時間を浪費するかもしれない。その最中に、しばらく話をしていなかった同僚にばったり出くわすかもしれない。そうなれば互いに近況を語り合うだろう。気が付いたときには、30分が経過している。

 その間ずっと、私のパートナーであるあなたは単独で着々と仕事を進めている。レビューしあう相手も、アイデアのキャッチボールをする相手もいないまま。ヘルシーな朝食をとったから、あなたはその調子で続けて昼休みになる。ところが私は、昼休みには休まない。いま食べたところだからだ。

 ペアプログラミングは2人でペアを組んで初めて機能する。無料の朝食には、従業員のスケジュールを合わせるだけでなく、血糖値レベルも合わせる効果がある。

第3の理由:無料の朝食は全社的なコラボレーションを促進する

 あなたと私が、かつてはあるプロジェクトで一緒に働いていたが、いまはピボタルの異なるチームに所属しているとしよう。ただし、あなたが取り組んでいる仕事は、私が現在取り組んでいる仕事と大きく関連している。したがって、雑談してアイデアを共有できれば、どんなに素晴らしいだろう。でもいったい、いつそれをすればいいのだろうか。

 ピボタルでは、少人数の集中型チームが、いくつかのペアに分かれて毎日8時間勤務するため、就業時間中は集中して高い生産性を上げている。他の人たちと接触する時間はあまりない。あなたと私が雑談をしたいと思ったらミーティングの予定を入れる必要があるが、お互いハードスケジュールを抱えているので、予定を組むにはしばらく時間がかかるのが常だ。さもなければ、地下鉄か、洗面所か、あるいはエレベータで鉢合わせするという奇跡的な瞬間を待つしかない。そんな瞬間は、決して訪れないかもしれないけれど。

 アイデアを共有できる雑談の時間や、偶然鉢合わせて近況を報告できる時間はぜひ必要だ。部署内や、部署の枠を超えた知識移転を促進するような、協業できる雰囲気が大切だと考えている。だがそれは、互いにコミュニケーションを取り、共有する場がなければ実現しない。

 これが無料の朝食を提供する第3の理由だ。あなたと私は社内カフェテリアで健康的な食べ物を取り、同じテーブルに付くことができる。そのおかげでピボタルの従業員もクライアントも、現在取り組んでいる仕事を話し合い、苦労話を分かち合い、そして互いに助け合うチャンスを日常的に得られる。

あなたの会社にとっての“無料の朝食”とは何か

 さて、誤解しないでほしい。みなさんの中にはおそらく経済に詳しい懐疑派がいて、「無料の朝食なんてものはない!」と考えているのではないか。ここでは詳細に説明するつもりはないが、しかし、21ヵ所にあるオフィスで働く全2300人の従業員に、温かい朝食を毎日ケータリングするのにいくらかかるか、簡単に計算できるだろう。

 最初はもしかすると、朝食の提供は、競争の激しいITスタートアップ業界で優秀な人材を引き寄せるためのコストだったかもしれない。だがいまや、ピボタルではコストに勝る収穫があると考えている。というのも、わが社が最も得意とする仕事で最大の効果を上げるような環境を整えたのだから。たしかに、コストはかかる。だがそれ以上に、ピボタルの総収入を押し上げる効果がある。

 あなたの会社も朝食の無料提供を始める必要がある、と言っているわけではない。もしかしたら、必要ではないかもしれない。だが、こんなふうに考えてほしい。ピボタルでは、従業員用コンピューターを購入するのとまったく同じ感覚で、従業員が仕事をより良くできるように朝食を提供している。

 あなたの会社は、競争力を高めるために、どのような仕組みを採り入れられるだろうか。


HBR.ORG原文 Why My Company Serves Free Breakfast to All Employees, May 01, 2017

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ジェイ・ハム(Jay Hum)
サンフランシスコを本拠としたピボタルのプロダクト・マネジャー。シード段階のスタートアップ企業からフォーチュン100企業まで多岐にわたる企業のソフトウェア開発を支援している。コーポレート・イノベーション部門と「ピボタル フォー・スタートアップス」プログラムのリーダーを兼務。ツイッター(@jayhum)でも発信している。