●独り言を言う

 独り言は評判が悪い。一人でブツブツつぶやいていると、アブない人と思われてしまう。人前でやってカッコいいことでは断じてない。しかし、独り言は自己説明に不可欠であり、概して学習に役立つ。1つには、独り言をつぶやくことで、ペースダウンができる。より熟考することで、一つの経験からより多くを学ぶことができるのだ。

 独り言は自分の思考について考える助けにもなる。内なる会話に従事しているとき、自分自身への問いかけは概して次のような流れに沿っている。「私が知っていると、私はどのように知ることができるか。何をわかりにくいと感じるか。私は本当にこのことを知っているか」。ポッドキャストを聞いている最中に一時停止ボタンを押したり、考えをまとめるためにマニュアルを読むのを一時中断したりして、自分の思考を考えることで、より効果的に自己説明のスキルを身に付けることができるのだ。

●なぜかと尋ねる

 自己説明をすれば、つい放置されがちな好奇心の衝動を言葉で表現できる。自分自身に「なぜ」と尋ねればよいのだ。

 ところで、テーマについて本当に知っていれば、「なぜ」はそれほど答えるのが難しい質問ではない。たとえば、あなたが育った町について、私があなたに「なぜ」タイプの質問をすれば、答えはいとも簡単に出てくるだろう。あまり知らないこととなると、「なぜ」質問の難易度は増し、そこから新たに専門的な知識を得る道が開かれる。

 実践方法として、「なぜ波はたつのか」という質問を例に見てみよう。なかには、なんとか基礎的な答えにたどり着く人もいるだろう。たぶん、こんな具合だ。「ええと、波は風と関係がある。風が水面を吹き渡ると、波紋ができる」

 だが必然的に、次なる質問が出てくる。「なぜ風が波をたたせるのか」。あるいは「なぜ風がなくても波はたつのか」。この時点で答えが出せなくなる。少なくとも私は答えられない。そこで、私は何らかの答えを探し始める。インターネットをあちこち検索し、文献をじっくり読んで、エネルギーがどのように水中に伝わるかについて情報を得る。こうして最終的に、私ははるかに多くの知識を身につけるのである。

●要約する

 要約は自己説明の簡単な実践方法だ。アイデアを自分自身の言葉で表現することで、学習効果は高まる。

 こんな経験はないだろうか。雑誌の記事を読んで、その要旨を友人に詳しく伝えたときのことを思い出してほしい。これも一種の要約だ。そうやって友人に伝えた後には、記事から得た情報を学び、記憶にとどめている可能性が高まる。

 もう1つの例として、ネットフリックスで視聴したドキュメンタリー映画について、最近、あなたの考えを説明するメールを書いたと想定してほしい。書きながら、アイデアに肉づけし、論旨が通るよう知恵を絞ったことだろう。その結果、概して、くだんの映画とそのテーマをより豊かに実感することになる。

 普段の生活でも実践できる。次回、誰か(上司か、配偶者、友人)から一連の詳細な指示を受けたら、その内容を言葉に出して繰り返してみるといい。すべてを復唱することで、知識を要約する措置を講じたことになるので、情報を記憶にとどめる可能性がはるかに高まるはずだ。

●関連づける

 自己説明のメリットの1つは、新しいつながりや関連性が見つけやすくなることだ。関係性がわかれば、記憶力が改善する。自分自身にアイデアを説明している最中に、関係性を探そうと試みるべきだ。

 記憶術のようなツールが効果を上げる理由の1つが、この関連づけである。虹の各色の最初の文字(赤<Red>、オレンジ<Orange>、黄色<Yellow>、緑<Green>、青<Blue>、藍色<Indigo>、紫<Violet>)をROYGBIV(ロイ・ジー・ビブ)という略称と関連づけることで、虹の七色を記憶しやすくなる

 専門分野で関連性に気づくと、理解が一層深まる。ブライアン・ロスが自己説明方法を使って大いに成功した理由も、この点にある。つまり、コンピューター・プログラミングについて学んでいたとき、彼は異なる言葉や概念と関連づけながら、アイデアを自分に説明しようと試みたのだ。彼が私に語った言葉を引用すれば、「自己説明で何をしているかというと、関連づけをしているのです。『ああ、なるほど、これがそれにつながり、それがあれにつながるから、これがうまくいくのか』と独り言を言っているのです」 

 自己説明は、働く人すべての学習ツールに加えるべきだろう。何しろ現代経済では、新たに関連づけ、新たな見識やスキルを習得することが常に求められる。

 AT&TのCEO、ランドール・ステファンソンによれば、技術担当者は時代に取り残されないように、最低週5時間は、オンラインのコースで勉強すべきだ。そのときはなるべく、1人の場所を確保するといい。そうすれば、声に出して独り言を言っても恥ずかしくないだろう。


HBR.ORG原文 Talking to Yourself (Out Loud) Can Help You Learn May 05, 2017

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ウルリッチ・ボーザー(Ulrich Boser)
センター・フォー・アメリカン・プログレスのシニア・フェロー。同センター内にあるザ・サイエンス・オブ・ラーニング・イニシアティブの創設者兼執行者でもある。著書にLearn Better: Mastering the Skills for Success in Life, Business, and School, or, How to Become an Expert in Just About Anythingがある。