調査の結果、自分のほうが仕事で夫より高いステータスに就いていると考えている妻は、怒りや恥辱を感じており、夫のステータスが低いせいで自分のステータスも下がっていると思い、それがまた結婚の満足度にもマイナスの影響を与えていた。さらに、離婚について考えたことがある割合も増加していた。他方で、夫のほうは妻のステータス波及効果の影響を受けていない。夫の場合、結婚生活での満足度が下がり、離婚を考えることが増えるのは、二人の関係に妻がはっきりと不満を示した場合だけだった。

 しかしながら、夫が家事や育児、介護を分担するなど、妻に対して高いレベルのサポートを行なっている場合は、妻が夫よりも高い地位にあっても結婚の不安定さにはつながらない。この点が、夫が精神的サポートだけをしている場合と異なり、高ステータスの妻に対して夫が実質的なサポートを行なう重要性を示している。この種の実質的サポートを提供することは、妻がキャリアに集中できるようになるうえ、敬意を示すことにもなるからだろうと私たちは考えている。

 妻のより高いステータスは、結婚に長期的な影響を及ぼすものなのか?

 これを調べるため、私たちは最初の調査から3年後に、調査対象だった同じ高ステータスの女性たちに連絡を取ってみたところ、90人から回答を得た。分析の結果、妻のほうが高い職業ステータスにあったことや。ステータスの波及効果を感じていることは、3年後の結婚生活の不安定さ(必ずしも離婚ではないが)につながることが判明し、この力関係を理解することがいかに重要かを証明する結果となった。

 以上の結果とは別に、今後の研究の課題も残っている。たとえば、仕事で夫より高いステータスにある女性は、性別に応じた役割分担のルールを破ったとして職場でペナルティを受けるだろうか? また、ステータスの波及効果はLGBTQ(性的マイノリティ)カップルの結婚にも不安定さをもたらすのか?

 とはいえ、以上の調査結果は、組織にも個人にも有意義なものである。

 第1に、これはキャリアの成功と家庭生活の両立を求める女性たちが、いまも苦労しているという明快な証拠である。家庭での幸福を手に入れるために高ステータスのキャリアを終える決断をする女性がいるかもしれないし、これまでの研究が示すとおり、パートナーへの脅威にならないようキャリアパスをあえて追求しない人もいる。いずれも、組織の人材開発にとってはマイナスの影響を与えることになる。

 第2に、今回の調査結果は、夫から実質的なサポートを受けることが妻のステータス不安の悪影響を和らげることを示している。この面で組織は、家庭生活に配慮した社内制度をすべての従業員に提供することや、男女を問わずその制度を利用すると罰を受けるのではないかというイメージを軽減することなどに取り組むという重要な役割を担っている。

 第3に、共働きのカップルは、キャリア上の目標やお互いが相手に望むサポートの内容について、腹を割った正直な話し合いを行なうことが大切である。たとえ気まずい対話になろうとも。またビジネススクールの教員たちには、キャリアと家庭のバランスを取るのはプレッシャもある一方で好機にもつながるということを、学生たちに十分理解させたうえで社会に送り出してもらいたい。

 最後に、今回の結果は「オスカーの呪い」というよりむしろ「オスカーの恩恵」であることを指摘したい。成功した高ステータスの女性は、経済的な不安に怯えることなく、夫と対等のパートナーとして人生や人間関係での選択を行なえる立場にあるのだ。今回の調査結果をそうポジティブにとらえることは、女性を結婚や職場、社会全般における対等のメンバーとして価値を認めることにもつながるはずである。


HRB.ORG原文 Does a Woman’s High-Status Career Hurt her Marriage?  Not If Her Husband Does the Laundry May 02, 2017

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アリソン・バーン(Alyson Byrne)
ニューファンドランドメモリアル大学経営学部の助教授。研究テーマはジェンダー、リーダーシップ、ステータス、仕事と家庭の力学など。

ジュリアン・バーリング(Julian Barling)
クイーンズ大学スミス・スクール・オブ・ビジネスの教授。ボーデン・チェア・オブ・リーダーシップ。著書に、The Science of Leadership: Lessons from Research for Organizational Leadershipがある。