オフィス内の空気の質を改善すれば、従業員の認知能力の改善を促進しうる。もちろん、上記はたった2つの調査ではあるが、その結果は換気率を高くするメリットについて、30年にわたる科学実証と完全に一致する。

 大半の建物では、管理者はただちに措置を講じられる。その第1歩は、空気の質に関する指標を調べて、改善の余地があるかどうか検討することだ。コストが心配になるかもしれないが、換気率の向上による空気の質改善コストは、一般に考えられているよりはるかに低いことが判明している(ある研究によれば、建物管理者はエネルギーコストを2倍から10倍も多く見積もる傾向がある)。

 我々は4つの異なるタイプの換気システムに基づき、コストモデルを作成した。対象地となった米国各都市は異なる気候帯に分布し、さまざまなエネルギー源を擁している。我々の推定によれば、換気率を2倍にするのに要するコストは、1人当たり年間40ドル未満だ。大半の都市では、もっと低い。エネルギー効率の良い換気システムを利用する場合は、当該コストは1人当たり年間1ドル~10ドルと推定される。

 また、我々の研究で得られた認知機能テスト結果をベンチマークとして、他の状況で同じテストを受けた何千人もの成績比較も実施した。そして、得点の上昇率を労働統計局から入手した給与データと組み合わせた(給与データは生産性の代理変数として利用した。そして我々の研究の対象者と属性を同じくするため、知識労働者のデータを抽出した)。我々の推定によれば、換気率を2倍に高めることから得られる生産性効果は、1人当たり年間6500ドルだ。この推定には、シックビルディング症候群の改善や常習的欠席の減少など、他の潜在的健康効果は勘案していない。

 結局のところ、マネジャーは費用対効果の計算すべてに健康への影響を日常的に組み入れるのが賢明といえるだろう。健康を考慮に入れれば、屋内環境の向上にかかるコストと、健康と生産性への効果を適切に比較検討できるようになる。たとえば、施設予算を増額すれば人材コスト削減につながることが、執行役の目に明らかになるだろう。このことから、建物は実質的に人材ツールといえる。

 屋内環境について、VOC、換気率および温度の管理に加えて、照明や騒音など、健康と生産性に影響を及ぼす他の重要な因子の管理を検討してもいい。

 今回の研究により、長年認められている現象が実証的に追加証明された。

 ベンジャミン・フランクリンはかつて次のように公言した。「密室で息が充満して入れ替えがされていない空気ほど、健康に悪い空気は、屋外には存在しないと確信している」。

 風通しが悪くて、むんむんする会議室で必死に集中しようとした経験が、誰にもあるはずだ。そんな時、窓かドアを開けて新鮮な空気を入れれば、室内の雰囲気が一新する。このことを認識して、従業員の健康と生産性のために空気の質を最適化する措置を取れば、企業はそのメリットを享受するだろう。


HBR.ORG原文:Research: Stale Office Air Is Making You Less Productive, MARCH 21, 2017

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ジョゼフ G. アレン(Joseph G. Allen)
ハーバード大学公衆衛生大学院の助教授。同大学院の「ヘルシー・ビルディング」プログラムのディレクターを兼務する。また、COGfxスタディの主任調査官、「9 Foundations of a Healthy Building」プログラムの主執筆者でもある。