牧岡 宏
アクセンチュア株式会社
執行役員 戦略コンサルティング本部 統括本部長

牧岡 なるほど"持続的"という言葉は社会や市場のルールが変わらないことが暗黙の前提になっているから、それはもう成り立たないということですね。よく論理的に考える「左脳経営」、感性を生かす「右脳経営」といわれますが、これまでのように顧客セグメントを調べて強みと弱みを分析して、パソコン上でグラフ化しても、今何をすべきかの答えは出ない。つまり、従来の左脳的なアプローチだけでは"自分たちのビジネスの将来、あるべき姿"は想像できないということです。

 ですから岩佐さんがおっしゃるように、常に新しい戦略を同時並行的に打ち出すためにも、右脳=直感で考えて行動し、仮に間違っていれば直ちに修正していくような経営が必要でしょう。アクセンチュアも、「Fjord(フィヨルド)」というデザインシンキングのパイオニアの企業をグループに加え、右脳の手法を強化しています。クリエイター集団のフィヨルドの特徴は、直感に基づいた斬新なアイデアでクライアントに改革の提案をするという点です。

岩佐 ビジネススクールでも、優秀なデザイナーやクリエイティブな経営者の思考法を学ぶことで新しい発想を生み出すデザインシンキングの教育に取り組み始めています。米国のイリノイ大学やカナダのトロント大学、どちらもビジネス教育の一環でデザインシンキングにも通じた人材の育成を標榜しています。これからの経営には左脳的分析も当然必要ですが、右脳的なデザインシンキングをどう取り入れるかが非常に大きな課題になってくるでしょう。

従来の戦略論の前提が
通用しなくなっている

牧岡 さらに言えば、これまで企業は、消費者が何を好むか、自社に何を望んでいるかなどを探り当て、そこに合わせる形で商品やサービスを開発・提供してきました。こうしたお客様目線の発想はちょっと前であれば正解でした。

 ところが今は、世の中の消費者が「無関心化」している。とくに米国や日本といった先進国では、そもそも商品やサービスに関心がない、商品を選ぶのも面倒だし、選ぶ時間ももったいないという人が急増しています。そういう消費者を取り込もうとしているのが、ボタンひとつ押すだけで商品が届く「Amazon Dash Button」や、話しかけるだけで検索から日用品の注文まで行なえる「Amazon Echo」なのです。

岩佐 ということは、消費者のニーズをいくら考えても時間の無駄ということですか。

牧岡 消費者のキャンパスは真っ白ですから、企業側で自分たちが何をしたいのかを軸に戦略を考えることが必要です。その1つの具体的な方法が「ミニマム・バイアブル・プロダクト」。最低限の機能を持った低価格の製品を作り、顧客からのフィードバックを得ながら改善を繰り返していく手法です。

岩佐 いわば「手足を動かしながら考える経営」ですね。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』でも、頭の中でサクッと考えたら、あとは手を動かしてプロトタイプを作り、改善していくモデルの優れた点を取り上げています。ヘンリー・ミンツバーグが提唱した「戦略クラフティング」という考えがまさにそれで、戦略はまさにクラフトのように、手で探りながら作り上げるものになりつつあります。

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