――本書では「区別」と「分離」について多くが割かれていますね。無関心と、それに拍車をかけている区別と分離は、人々の仕事と経済活動をどう方向づけてきたのでしょうか。

 今日の人々はますます、自分と似た者同士で固まれるようになっています。民主党員の隣人が民主党員である可能性は、以前よりもかなり高い。支持政党が違う相手との結婚に対する反対は、異人種間の結婚への反対よりも多い。少なくとも、世論調査ではそうなっています。

 でも、いちばん重大だと私が思うのは、「所得による物理的な分離」が全体的に起きていることです。金持ちは他の金持ちと同じ場所に住んでいる。あまり裕福でない人々も、固まって住む傾向がある。経済的に入り混じった地域コミュニティは、大幅に減っています。ラジ・チェティの研究によれば、多様性のあるコミュニティは経済的・社会的な流動性が高いのですが、それは地域の高級化が進むなかで急速に失われているのです。

 これに伴うある種の副作用が、米国の多くの地域で増えている、人種間の分離です。学校で見られる人種間の隔たりは多くの場合、一般的な人種差別意識よりも、所得と富の格差が原因です。格差も差別意識と同じように不健全でしょう。

――その傾向は、業界構造や企業群の構成にも見られますね。本書でも少し触れられていますが、企業や労働者の間で命運が二分されているかのようです。

 そう、「スーパー企業」と呼ばれるものの台頭ですね。グーグルとフェイスブックとアップルがその典型例です。同業他社に比べて生産性がすさまじく高いうえに、幅広い分野でイノベーションを起こしている。スーパー企業の数はきわめて少なく、非常にクリエイティブです。

 でも最近、働く人々はどちらかに分かれてしまう傾向があります。素晴らしい会社で安定した職に就き、手厚い投資を受け、素晴らしいキャリアを歩める人がいる。その一方で、やがて陳腐化する仕事に就き、スーパー企業とはほぼ縁がなく、賃金停滞に遭いやすい人もいる。この分岐は時とともに広がっています。

 ビジネスに関してもう1つ、「マッチング」の原理について、音楽市場の例で考えてみましょう。かつて、そう遠くない過去の話ですが、人々が消費し購入するのは「新しい」音楽でした。その多くはジャンクなものでしたが、なかには偉大なものもありました。

 いまではiTunes、スポティファイ、パンドラ、ユーチューブで最初から「マッチング」できます。つまり、いつ何どきでも、いまこの気分に合っていて聞きたい音楽をピンポイントで聞ける。これは聴き手にとっては素晴らしいことです。でもその結果、人々はより「古い」音楽により多くの時間を費やし、それによって未来の聴き手に向けられるべき創造性の流れを阻害しているのです。

 マッチングは個人にとってよいことかもしれないけれど、より広い社会における革新性にはマイナスとなる、という一例です。

――AIについてはどうでしょうか。AIによって、人々は変化を真剣に受けとめ、さらなる変化を求めざるをえなくなるのか。それとも、AIは反発を招くことになるのでしょうか。

 AIは大きなインパクトをもたらしますが、それには長い時間がかかるでしょう。最も大きな問題の1つは、私たち自身です。無人運転の自動車やトラックその他の乗り物を考えてみましょう。それらがちゃんと動くであろうことはわかっています。でも、法規制の枠組みに関しては、私たちの生活に革命をもたらすに十分な法律が議会を通るまでに数十年はかかるのではないでしょうか。むしろ短期的な影響としては、多くのトラック運転手の仕事がなくなり、新たな職の創出がそれに間に合わず、失業につながるでしょう。